こどもと考える社会


毎日新聞No.663【令和6年5月12日発行】

 こども施策を社会全体で総合的かつ強力に推進していくための包括的な法律として、2023年4月、「こども基本法」が施行された。同12月には、こども基本法の基本理念にのっとり、幅広いこども政策に関する基本的な方針を定めることを目的とした「こども大綱」が策定された。これにより、すべてのこども・若者が心身の状況や置かれた環境に関係なく健やかに成長し、将来にわたり幸せに生活ができる「こどもまんなか社会」の実現を目指すための取り組みを社会全体で推進していくことになった。
 こども大綱では、「こどもまんなか社会」の実現について、こども・若者の視点を尊重し、対話しながら、こども・若者とともに進めるとしている。

 これまでは、こどもの育つ環境など、こどもに関することは周りの大人が考え決定していた。仮にその場にこどもが参加して大人に対して意見を言っても、「こどもだから」「若いから」といった理由で、大人は意見を聞くことをおろそかにしていたのではないだろうか。もしくは、ただ話を聞くだけで、議論にすらならなかったのではないだろうか。
 もちろん、こどもの意見を全て受け入れなければいけないわけではない。しかし、これからは、当事者であるこども・若者の意見を真摯(しんし)に聞き、こども・若者の自己実現を後押しすることが求められる。大人が耳を傾けることで、こどもに主体的に参画する姿勢が育ち、更なる意見の表明や参画につながる好循環を生み出すことができる。
 こうした環境を整えるために、大人は、こども・若者を1人の「人」として接する姿勢を持つとともに、こども・若者のさまざまな視点や考え方を受け入れられるよう意識改革をする必要がある。また、こども・若者が安全に安心して意見を述べることができる機会を、大人が率先して作ることも必要になってくる。一方、こどもは、自分の考えを持つことを意識するとともに、いつでも自分の意見を大人に伝えられるよう準備をする必要がある。大人とこどものどちらか片方だけが考え、実行してもうまくいかない。大人とこどもが一緒に、「こどもまんなか社会」をどうやって実現するかを考え、行動すべきではないだろうか。

 大人とこどもが互いを尊重し、これからの社会について共に考える。その先に「こどもまんなか社会」の実現があると感じている。

(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 藤原 佑樹