女性活躍の鍵は何か
山梨日日新聞No.48【令和6年7月8日発行】
「女性活躍」と聞いて、みなさんはどんなイメージをもつだろうか。筆者がその言葉を聞いて真っ先に思いついたのは、「仕事に熱心な女性」であり、女性社長や女性管理職のイメージである。
では、山梨県には実際にどれくらい女性管理職がいるのだろうか。民間調査会社・帝国データバンクが行った「女性登用に対する意識調査」(2023年)によると、山梨県の女性管理職の割合は11.3%で47都道府県中11位と、全国平均の9.8%を上回っている。この数値だけみると、山梨県は女性活躍が進んでいるのではないかと感じるかもしれない。しかし、先日県が実施した「働き方改革等実態調査」によると、「管理職を目指したいと思うか」という問いに対して、「いいえ」と回答した女性の割合は74.3%と、女性の大半が管理職を目指したくないことがわかった。そもそも、女性管理職の割合が増えることが女性活躍というのかについては別の議論が必要だと思うが、少なくとも女性が活躍したいと思える環境があるとは言い難いのではないだろうか。
また、同じ調査で「現在の勤務先で管理職になるために必要だ(必要だった)と思う取組」という問いについて、「能力や実績への正当な評価」との回答が男性で 57.2%、女性で 47.9%と共に最も高くなった一方、次に高かった回答は、男性が「管理職としての勤務条件の明確化」の40,5%に対し、女性は「仕事と家庭の両立に対する、管理職や同僚からの理解」の47.7%で、女性の回答は男性と異なり、最も高い数値とほぼ変わらなかった。他にも、男性は自身のスキルアップ等の回答が高いのに対して、女性は仕事と家庭を両立するための取組みに関する回答が高い特徴があった。このことから、女性は能力や実績の正当な評価だけでなく、男性に比べて組織や同僚、家族も含めた周りからの理解や協力も、同じくらい求めていることがわかる。加えて、男女別の回答の割合から、「男性は仕事、女性は家事」といった固定的役割分担意識がまだ根強く残っていることも見受けられた。
山梨県においても、女性活躍を進めている企業は多数存在しているが、女性が活躍しやすく、また、したいと思える女性が多くいるかといわれると、まだその段階には至っていないように感じる。そうした中で、企業から女性活躍のロールモデルとなるよう期待されても、躊躇してしまうのも理解できる。加えて、社会の中に固定的役割分担意識が根強くあれば、やりたいことを断念してしまう女性も多くいるのかもしれない。それだけ女性が活躍するということは、今の世の中ではハードルが高いのだろう。
その解決にはどのような方法が考えられるのだろうか。例えば、女性がやりたいことができるよう、男性が協力することや、女性自身が自信をもって仕事に取り組めるよう、活用しやすい制度を企業が作るなどの支援の先に、女性活躍のロールモデルが生まれるのではないか。そして、ロールモデルが一度生まれると、その姿を見た別の女性が自らもそうなりたいと感じ、意欲的に仕事に取り組むといった女性活躍の好循環を生み出すことこそ、これからの女性活躍に求められている姿ではないだろうか。こうした女性活躍の手助けとなるような研修を、7月から県の委託を受け、山梨総研で実施する予定である。誰もが諦めず、互いに支え合い、活躍できる未来の実現を期待している。
(公益財団法 人山梨総合研究所 主任研究員 藤原 佑樹)