(2)第2回 環境・健康ビジネス研究会
平成22年5月18日、16時~18時、会場:山梨総合研究所、6F会議室


□ 講演:低炭素地域づくりー世界の動向を巡って

  • 低炭素地域づくりを実現するための環境配慮型建築の最新事情
  • 世界のエコシティ、低炭素型地域開発事例

講師:彦根茂氏 アラップ東京オフィス代表
(Ove Arup &Partners Japan Ltd)
(東工大修士課程修了~日建設計を経て現職)
:小泉あい氏 アラップ東京オフィス プロジェクト・マネージャー
(東京芸大卒~竹中工務店~マサチューセッツ工科大学を経て現職)
* 肩書き、所属は当日のまま

□ 講演概要

 アラップは1946年英国で設立されたエンジニアリング・コンサルタント会社です。現在、世界に90以上のオフィスを抱え、スタッフ10,000人以上を擁する会社になっています。アラップ東京オフィスは、英国のアラップ・グループ・リミテドによる100%出資の子会社で、1989年に設立されました。事業内容は土木・建築に関する設計、監理及びコンサルティングサービスです。研究会では、アラップもしくはアラップ東京オフィスが参加した低炭素地域づくりのプロジェクトを中心に世界のプロジェクト動向を紹介します。

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 現在、イギリス国内では12の先導的なカーボンゼロ・プロジェクトが推進されています。

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 アラップが係わったカーボンゼロのプロジェクトでは、イギリス・ロンドン郊外のベッドゼットプロジェクトが著名です。このプロジェクトは、南ロンドンの下水処理場跡地1.65haに、ゼロ化石エネルギーを目指した職住混合開発です。82戸の住戸、事務所スペースなどやコミュニティ施設があります。2000年着工、2002年に入居が始まり、10年が経過しようとしています。超断熱工法とパッシブソーラーで暖房用エネルギーを大幅に削減しています。エネルギーについては木材チップを用いたバイオマス・コジェネの導入で、化石燃料ゼロを目指しています。また、自動車の共同利用(カークラブ)を推進するなど車依存のライフスタイルの転換や、地産地消によってフードマイルの低減を図るなど、様々な試みがなされています。
 このように、ベッドゼットはロンドン郊外の小規模住宅地開発プロジェクトですが、カーボンゼロを目指し、様々な実験的な試みが導入されています。

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 英国のカーボンゼロ・プロジェクトの特徴はディベロッパーにより推進されていることで、小規模開発のほか商業施設、コミュニティ施設などを含む260世帯~1000世帯の大規模開発も実施中です。ガリオンズパーク(260戸)アシュフォードゼッド(1000戸)などがその代表例です。

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 カーボンゼロ・プロジェクトや低炭素社会の推進のためには、エネルギー枯渇に対する社会意識や法制度の拡充が前提条件です。英国を含むヨーロッパの視点からみますと、資源枯渇についての考え方は次のようにまとめることができます。

〇ヨーロッパの政策変化

  • 将来の繁栄の脅威
  • 経済は社会と環境の変化にリンク
  • 限りある資源でグローバルの舞台で競争

〇将来可能な資源

  • 燃料及びマテリアルの供給安全性が不安定
  • 需要の削減及び資源の再利用
  • 廃棄電気製品の処理方針
  • ゴミ及び廃棄車両の処理方針

〇地球温暖化及びCO2排出の影響

  • 京都議定書に従う法令の整備
  • EUの排出権取引制度 
  • 建築エネルギーパフォーマンス方針
  •  消費者に告知:建築エネルギーラベルの導入
  • 2020年までに20%の再生可能エネルギーの導入(英国では15%)

 また、カーボンゼロ排出社会に向けたプロジェクトを推進するための条件は次のように整理できます。

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 なお、世界のエコシティに関しては、次のようなプロジェクトがあります。中国では東灘、長興、天津など、米国ではサンフランシスコのトレジャーアイランドなど大規模なエコシティの開発が推進されています。

東灘

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天津

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サンフランシスコ

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