(4)第4回 環境・健康ビジネス研究会
平成22年7月20日(火)、16時~18時、会場:山梨総合研究所、会議室


□ 講演:再生可能エネルギーと地域産業活性化の可能性

・    バイオマス、太陽光、小水力などの再生可能エネルギーの活用を地域産業にどのように結びつけるかを解説する。

講師:竹内良一氏 NPO法人循環型社会推進センター、エグゼクティブ・コンサルタント
(東工大卒~荏原製作所、環境事業本部・技術計画室長を経て現職)

□ 講演概要

 改正新エネ法の定義によりますと、再生可能エネルギーは、下図のようになります。この報告では、再生可能エネルギーの中で、比較的なじみのある、太陽光発電、風力発電、小水力発電、太陽熱利用、バイオマス熱利用、地熱利用について、その開発動向を紹介し、地域産業にどう結びつけるか、その可能性を考えてみたいと思います。
 京都議定書では、2008~2002年の第1約束期間に1999年比で6%の二酸化炭素排出量を削減することが約束されました。ところが、各部門の実績値では産業部門を除き、大幅に増加してしまいました。もちろん省エネの推進も重要ですが、化石エネルギーから再生可能エネルギーへの転換も同じく重要な課題になっています。

h22-4-1

【太陽光発電】

 太陽電池にはシリコン、化合物系、有機系などがあり、各社が参入していますが、現在普及段階にあるのは、結晶シリコン、薄膜シリコン、CIS化合物で、有機系は研究開発段階です。
 太陽光発電の導入量では日本がトップランナーでしたが、2005年にはドイツに抜かれています。また、国内の導入量と価格を見ると、導入量が増加するにつれ、価格が下落しています。
 日本でもメガソーラーの太陽光発電所が近年生まれていますが、スペインなどでは、敷地100ha以上の大規模発電所が整備されています。
 太陽光発電の産業構造は大別して、太陽電池や周辺機器メーカー、システムインテグレーション、設置工事の3層に分かれます。中小の地元企業の参入できる業務としては、システム統合の一部と設置工事などになるものと思います。
 風力発電は、図のようにドイツ、アメリカ、スペイン、インドなどに比し、日本の導入量は極めて小さいことがわかります。日本は、風力発電の適地が少ないことなどがその理由とされています。ドイツでは、陸地から洋上へと風力発電をシフトしています。風力発電の産業構造は、太陽光発電と同様の3層構造ですが、中小の地元企業の分野は設置工事に限られます。

h22-4-2
 水力発電は図のように、発電出力でマイクロ水力、ミニ水力、小水力などと分類されます。現在、各地で小水力発電の設置がなされていますが、多くは、100kW以下のマイクロ水力です。小水力発電の産業構造は、太陽光発電と同様で、中小の地元企業は、システムインテグレーション、設置工事などの分野への参入が期待されます。

h22-4-3

 

h22-4-4

 戦後の植林が伐採期を迎える中、現在、全国各地で木質バイオマス利用の試みがなされています。最上町では伐採、家具などへの木材利用、ウッドチップのエネルギー利用など、一連の木材産業クラスターが形成されつつあります。
 また、最上町では福祉施設などの室内暖房やお風呂の給湯、ハウス園芸などのエネルギー源として、木質バイオマスを用いています。木質バイオマス利用を持続可能にするためには、木材産業に係わる川上から川下までのチェーンが形成することが必要です。

h22-4-5
 全国各地の温泉施設では、シャワー他の給湯や室内暖房に重油が用いられています。山梨県のある自治体温泉の例を挙げますと、図のように冬季の重油使用量が増大しています。利用客は春、夏、秋に多く、冬は閑古鳥が鳴くという状況にも係わらず、エネルギー使用量は増大し、経営を圧迫しているわけです。

h22-4-6
 そこで、木質バイオマスを利用することによって、どの程度経費節減が可能かどうかを試算してみました。重油を一部使い、チップボイラを導入する場合では、経済的にも成立する可能性があるとの結果です。また、二酸化炭素は50%ほど削減できます。木材産業が成立していないと、木質バイオマス利用は出来ませんが、山間地域については、木質バイオマスの利用推進が求められます。また、地域産業との関係はその他の再生可能エネルギーよりも強いと思います。

h22-4-7
 太陽熱利用の歴史は古く、太陽熱温水器は1950年代から既に農村地域でも利用されていました。当時の太陽熱温水器は金属や樹脂製の容器に水を蓄え、太陽熱で加熱し、風呂に利用しましたが、日没後にすぐ利用しないと、冷めてしまいました。次に現れたのが、集熱部と貯湯部が分かれた「自然循環式」といわれるもので、保温性能が高くなり、風呂のほかの給湯にも利用されるようになりました。1980年以降、家庭用のほとんどがこのタイプです。2000年以降には、エコキュートが現れました。夜間電力を利用したヒートポンプで貯湯し 給湯する利便で経済的なエコキュートはオール電化住宅に格好の製品です。他方、温水器は給湯圧が弱く、デザイン的にも劣り、利便・快適性に欠けるため、普及は停滞しています。2010年から、東京都は太陽光発電や太陽熱温水器を飛躍的に普及するための事業に着手しました。太陽熱利用は太陽光発電に比し、経済的にも有利です。こうした、社会情勢から、太陽熱利用機器の普及が進むものと考えます。
 また、地中熱利用によって、冷暖房の効果が上がりますが、通常のヒートポンプよりも導入価格がまだまだ高いという状況です。
 いずれにせよ、今後、石油価格が上昇する局面を向かえると予想されますし、エネルギー安全保障の意味からも、地域の再生可能エネルギーの導入が推進されると思います。

h22-4-8

 

h22-4-9