8)第8回 環境・健康ビジネス研究会
平成22年12月14日(火)、16時~18時半、会場:山梨総合研究所会議室


□ 講演:ソーラー産業とスマートグリッド(スマートシティ)の動向

講師:

江本 英史(えもと ひでし)氏
:(株)日本政策投資銀行産業調査部
(調査研究領域等:エネルギー需給見通し、気候変動対策、太陽光発電産業)

木村 健(きむら けん)氏
:(株)日本政策投資銀行産業調査部
(調査研究領域等:スマートグリッド、グリーンビルディング)

□ 講演要約

〇 太陽光発電産業の動向

 世界の太陽光発電の導入量は2003年から08年にかけて、10倍以上に拡大しました。世界の累積導入量はEUが7割を占め、ドイツが4割と太陽光発電産業を牽引しています。現状では、太陽光発電のコストは高く、普及拡大には政策支援が不可欠です。ドイツではメガソーラー発電所を旧東ドイツの化学工場や石炭採掘場跡地に整備することにより、用途転換が困難な土地を活用することで、地域経済を活性化させている側面もあります。太陽光発電産業は、セルの生産、原料・部材、製造装置の供給から設置、メンテナンスまでと裾野が広く、導入量が多いほど関連雇用も多く生み出されます。景気が悪化する中、地球温暖化対策のほか、産業力強化や雇用創出の観点からも太陽光発電などの支援策が各国に広がっています。欧州の支援策としてはFIT(固定価格買取制度)がありますが、これによってアジア製のセルの輸入が急増し、国内生産の増加につながらず、FITの見直しも行われています。
 海外の太陽光発電ビジネスを推進するのは計画、資金調達、建設、維持管理を担うシステムインテグレーターで、スペイン、ドイツなどでは有力なSIが生まれています。また、太陽電池メーカーがSI事業に参入する例も増えつつあります。世界には数百社の太陽電池メーカーがあり、上位10社のシェアは5割弱ですが、将来的に政策支援が縮小するに従い、メーカーの淘汰が進むと予想されます。また、セルの生産は中国、マレーシアなどのコストの安い地域にシフトしつつあります。

〇 スマートグリッドの動向

 ITや先端技術を活用した21世紀型の新たな送電網をスマートグリッド(賢い送電網)といいます。従来の送電網が中央集権発電・管理、一方向送配電であるのに対し、スマートグリッドは分散発電・管理、双方向送配電により再生可能エネルギーの利用拡大を意図するものです。スマートグリッドを構成する技術分野、関連企業は幅広く、様々な企業がスマートグリッドに参入しています。
 興味深いことは、海外のスマートグリッドでは、情報通信、ソフトベンダー等幅広い企業がエネルギー分野に参入し、得意分野を持ちつつ、戦略的提携と競合関係が混在していることです。他方、日本では電力会社に部材を提供している電機メーカー、太陽光パネルや燃料電池を統合する住宅メーカー、制御システムを含めた統合パッケージシステムを提供する総合電機メーカーが、既存の電力インフラ市場の延長として参入しているのが特徴的です。
スマートグリッドの取り組み例としては、アムステルダムのスマートシティが挙げられますが、送電網のスマート化は無論のこと、都市生活の情報化も含めた包括的なプロジェクトを志向していることに特徴があります。