(7)第7回 環境・健康ビジネス研究会
平成22年11月30日(火)、16時半~18時、山梨総合研究所、会議室
□ 講演:地方の中小ビルや工場(団地)の省エネルギー動向
講師:三角 治洋氏 (財)省エネルギーセンター 特任講師
エネルギー使用合理化専門員
□ 講演概要
〇 何故省エネか?
その理由は、第1は地球温暖化対策、第2は化石エネルギー供給問題への対応、第3は経営的に省エネにより、省コストが実現できることです。
日本のエネルギーは化石エネルギーが84%を占め、将来、原油など化石エネルギー価格が上昇します。また、ビルを始めとする事業所は、図に示すように光熱水費用がかかりますので、省エネは事業者とって大きな課題になります。
〇 ビルの消費エネルギー
事務所ビルの消費エネルギーは図のように、空調などが42%、照明・OAが43%で、これら機器の消費エネルギーが85%を占めています。なお、病院は事務所の3倍の消費エネルギーで、空調・照明が63%、給湯・調理が18%となっています。
ビルは稼働時間が少ないため、設備改修による省エネ化は投資効率的には難しく、ビルの省エネは空調、照明・OAについて運用改善をどう推進するによって決まります。
〇 省エネルギー対策
省エネルギー対策には、①運用の改善、②設備の改修、③管理の充実があります。
事務所ビルを例にとれば、空調設備は過大設備で、年間の稼動時間の80%は設計負荷の35%以下というのが実態です。従って、過剰な空調能力を抑制するなどの運用による改善の余地が大きいといえます。また、照明に関しては、基準値よりも、はるかに明るい照明がなされている場合が一般的です。特に、廊下・ロビーなどは倍以上の明るさになっています。過剰照明については、照明の間引きなどによって抑制することができます。
エネルギー管理は実際どのように行われているのでしょうか?管理組織や担当を明確にし、プラン、実行、チェック、アクションというPDCAサイクルによって運用改善を進めていけば、省エネは大幅に達成可能です。
〇 運用の改善
運用改善の基本は、エネルギー負荷の軽減、エネルギー・ロスの低減、高効率運転の追及の3つです。
運用の改善は、空調温度の設定、消灯の徹底、昼光の利用、夜間外気による冷房など、皆さんご承知のような方法があります。
・ビルの運用改善効果
省エネセンターが行ったエネルギー診断事例では、セントラル空調ビルの場合、室温調整や空調運転時間の短縮、照度調整などによって約10%の省エネが達成可能です。
・福岡市立総合図書館の運用改善
福岡市立総合図書館は運用改善によって、大幅な省エネを達成したケースと有名です。平成10年から18年の間に、消費エネルギーを40%、エネルギー金額を46.9%削減しています。
・この冬の運用改善策
この冬、皆さんに実施していただきたい省エネ対策は、次のようなものがあげられます。是非ともお願いしたいと思います。
〇 設備改善の動向
ビルの設備改善ではエアコン制御の高度化、省エネ型照明設備の導入、建物断熱対策などが挙げられます。これらは施設のリニューアル時や設備更新時における改善策で、費用もかかります。省エネについては、運用改善が第一歩です。まずは運用改善を進め、効果を評価した後、設備改善もご検討いただきたいと思います。