ブックタイトル山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

ページ
107/110

このページは 山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌 の電子ブックに掲載されている107ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

102私が育ったのは八ヶ岳南麓にある30 軒ほどの小さな農村集落である。地域活動はいくつかの集落の集合体である「区」単位で行い、区が行政の最小単位ともなっている。私の所属する区は、90 軒くらいの規模になるだろうか。区内を見渡すと、おじいさん世代とその息子世代が集落に住み、孫世代は高校卒業と共に集落を離れる。そんな状況がテンプレのように広がっている。高齢化と若年層の流出が進み20 歳~40 歳は圧倒的に少ない。空き家も目立つようになってきた。生活基盤の維持管理(水路、区有林、集会場、共用部分など)は70 歳代も主力級の活躍を見せている、定年したての60 歳は若手の扱いだ。私の親は今もそこに住んでいるが、私自身は高校卒業とともに県外へ出て、5年ほど前に山梨に戻り、実家から車で30 分程離れた場所に部屋を借りている。居住していないにも関わらず様々なお誘いがあり、消防団に青年部に広報部にと、さまざまなお役目を賜り、忙しい休日を過ごしていることも少なくない。もし、実家に戻るという選択をしたとき、どれほどのお役目を頂戴するのかと思うと正直、怖い。先日、青年部の活動として、市のお祭りへの出店準備をしていて気付いたことがある。地域住民の職業の多様性である。農業を生業とする共同体が、兼業化の進展によって様々なスキルをもった共同体に変化し、それぞれのスキルを生かして地域活動の質を高めている。そして今や、70代のおじいさんまでもが定年までは兼業農家として働き、農業以外のスキルを持つ世代となっているのである。地域活性化に必要となる、地域資源の発掘と磨き上げの手法、外部から見た新しい視点、新しいアイデア、先行事例の分析、人脈など、その全てが総研には揃っている。住民が地域の活性化を望む時、総研の研究員はそっと背中を押せる存在となれるのではないだろうか。さぁ、地域へ飛び出せ総研職員!地域に「資源」と「活性化という選択肢」が残されているうちに。総研職員だからできること山梨総合研究所 研究員 大多和 健人「地方創生」や「ローカル・アベノミクス」という言葉を耳にするようになって久しい。第2次安倍内閣の経済政策、いわゆる「アベノミクス」は、都市部や大企業においては、一定の効果が見られたものの、地方や中小企業への波及効果には乏しかった。そうした状況から、2014 年、政府は、人口減少や地域経済の縮小といった諸課題の解決によって経済成長を図ろうと、アベノミクス第2弾となる「ローカル・アベノミクス」を打ち出し、その大きな柱として「地方創生」を掲げた。これを受け、各地方自治体においては、「地方版総合戦略」が策定され、16年度から本格的な「事業展開」に取り組む段階に入った。2017 年6月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」には、ローカル・アベノミクス推進のため、地域の「稼ぐ力」の強化が掲げられた。こうしたなか、最近、アメリカの経営学者マイケル・ポーター氏が提唱するCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)という概念が、注目を集めている。社会問題の解決と企業の利益、競争力向上を両立させ、社会と企業の両方の価値を生み出すための経営フレームワークである。まさに、「三方よし」の概念であるが、一足飛びの事業化は容易ではない。まずは、何から始めたらよいだろうか。ソニーのウォークマンが、アップルのiPodに市場を奪われたのは、ソニーが事業ごとの独立採算制をとっていたのに対し、アップルは、社会システムや人々の日常生活の変革までも見据えたうえで、全社利益を追求する組織体制をとっていたことに一因があるとの見方がある。部門を越えて社員が協業できる環境は、様々なアイデアが飛び交い、新しい発想が生まれやすい。こうした体制が、地域の多様な主体間においても実現できたとしたら――持続可能な地方創生に向けては、地域の多様な主体間で課題を共有し、継続的に「稼げる」仕組みの構築が期待される。そのためには、既存の組織や部門の壁を越えて橋渡しのできる人・組織づくりが、カギとなるのではないだろうか。地域シンクタンク山梨総合研究所の一員として、こうした地域の課題解決に貢献することができれば幸いである。「稼げる」地方創生へ山梨総合研究所 主任研究員 小林 雄樹