ブックタイトル山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

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概要

山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

26地方創生とは、本格的な人口減少時代に突入した中、東京一極集中の是正を図り、地方の人口減少を食い止め、日本全体の活力を上げることを目的とした第二次安倍内閣による「まち・ひと・しごと創生」などの一連の施策である。現在、山梨県では「まち・ひと・しごと創生人口ビジョンおよび総合戦略」、各市町村においても「人口ビジョンおよび総合戦略」を策定し、人口減少対応策を実行している。その中で全国的に大きく取り上げられているのが、都市から地方への移住や二地域居住であり、限られた人口を獲得しようと全国の市町村がしのぎを削って活動している。本稿では、地方創生の中でも「都市から地方への移住」、「二地域居住」に焦点を当て、移住策の方向について考えてみたい。まち・ひと・しごと創生会議において示された「東京在住者の今後の移住に関する意向調査(東京都在住の18~6 9 歳の男女1,200 人に対するインターネット調査)」によると、「移住する予定又は移住を検討したい人」は“約4割”、また、「Uターンや二地域居住を行ってみたい人」は“約3割”と回答を得ており、移住・Uターン・二地域居住による地方への人口移動の期待は高い。しかしながら、移住する上での不安・懸念点としては、「働き口が見つからないこと」、「日常生活の利便性」、「公共交通の利便性」が比較的多く、次いで「移住先の人間関係」、「医療・福祉」が多い。次に受け皿の地方自治体における住民の生活満足度を地方自治体が実施している施策の満足状況に置き換えて見てみる。本稿ではWEB公開している山梨県K市の総合計画市民アンケートを比較材料とした。K市は地方中小都市で、中山間部、都市部、都市近郊農地部が混在しており、移住者の受け入れに対して多様な選択肢を提供できる都市である。市民アンケートは各施策に対して「満足」、「どちらともいえない」、「不満」を5段階評価している。アンケート調査結果を筆者が因子分析を行い、満足度と関心度の軸を設定し、関連施策ごとに分類した。就業環境の評価となる「第2次産業、第3次産業関連施策」は、満足度と関心が共に低い。日常生活の利便性の評価となる「都市インフラ整備関連施策」は満足度が低いから高いに分布し、関心は非常に高い。公共交通の評価となる「交通関連施策」は、満足度が低く、関心は高い。コミュニティの評価となる「コミュニティ関連施策」と医療・福祉の評価となる「医療・福祉関連施策」は、満足度は比較的高い。移住希望者の“不安・懸念点”と、受け皿となるK市住民のK市施策への“満足状況”を比較する。就業環境と公共交通の利便性については、移住希望者が不安・懸念点を抱え、またK市住民も不満が高いが、就業環境へのK市住民の関心は低い。日常の利便性と移住先の人間関係については、同じく移住希望者が不安・懸念点を抱えているのに対し、K市住民の満足は高い。移住希望者の不安・懸念点と住民の不満足度が一致する就業環境や公共交通の利便性は、都市に比べて地方の評価は一般的に低い。この改善には構造的な問題を含んでおり困難を要するが、住民や移住希望者ともに優先的に取り組む課題だと言える。日常の利便性と移住先の人間関係は意識の食い違いがあり、PR活動により意識の差を埋めることが必要である。最後に、地域の満足度や魅力が高まることが、移住の促進に繋がる。その中でも就業環境の整備は最重要である。地域の魅力を地域資源として再発見し、それを活用した創業を支援して新たな雇用の創出を図っていくことが求められる。アンケートからみる地方創生に必要なこと合同会社環境計画設計 代表社員 稲﨑 昇一