ブックタイトル山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

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概要

山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

20th Anniversary43山梨総合研究所 創立20周年、誠におめでとうございます。新世紀甲府城下町研究会は、甲府城を中心としたまちづくりの調査研究を目的として立ち上げられ、今年で15年目を迎えます。立ち上げ以来、貴研究所には事務局を請け負っていただき、所員の皆様からの一方ならぬご支援を賜りました。また早川源前副理事長には平素より暖かなご指導を頂戴し、当研究会はここまで歩んで来れたと確信しております。この場を借りて、改めて御礼を申し上げます。私は、青年会議所、商工会議所、そして当研究会に所属し、長年に亘って甲府のまちづくりに関わってきましたが、未だ胸を張れるような成果は得られておりません。その要因の一つが、ここ20年程の「まち」に対する市民意識の低さにあると考えています。?自らの住まう「まち」に自信と誇りを持ち、愛すること? それが「まちづくり」の本質であり、そのための「ひとづくり」が甲府の振興に欠けているのではないかと思うのです。昨今の地域活性化ブームで、経営学的手法を用いた企業誘致や観光産業育成に成功している地域は多数存在します。東京一極集中に歯止めをかけるため、地方も戦略的に資源の活用と市場の分析を行い、顧客価値の創出を図るべきでしょう。一方で、合理的と思われる経営学的な発想は、効率性あるいは利便性、ひいては全体の最適化を志向しがちです。その結果、「地方の特色を活かしたまちづくり」という画一性(ゆるキャラなどが正にそうです)が、その自己矛盾に気づかないまま蔓延し、「まち」の魅力が「ひと」に根付くことはありません。自分の「まち」を愛せなければ、まちづくりは合理性にのみ頼ることになり競争が生まれる。競争は「ひと」という資源を地域間で奪い合います。そうして、地域格差がますます広がっていく。唯一の対抗策は「まち」を想う「ひと」を育てること。それが私の危惧であり、また希望でもあります。「ひと」とはどのような存在でしょうか。私は、昨今の合理的な手法と対極にある、ひとの「非合理性」にこそ価値があると考えています。現代は社会・経済すべてが合理主義に支配されているように思います。その最たるものが「民主主義」の概念です。本来は人民主権の考え方であるにもかかわらず、今日では単なる議会主義、すなわち多数決と混同されている。多数決はあくまでも民主主義を実現するための合理的方法論であり、教義の本質ではないはずです。方法論に支配されてポピュリズムがはびこり、結果として一人ひとりの人間がないがしろにされていることは実感するところでしょう。経済においても、金融資本主義の行き過ぎでサブプライムローン問題が発生しました。これは「金融」という合理性を追求し、「信用」という非合理性を軽んじた結果ではないでしょうか。迫りくるA(I 人工知能)の時代、すなわち「シンギュラリティ」問題も私たちに合理性・非合理性のジレンマを突きつけています。まちづくりに留まらず、問題は先送りできる状況ではありません。では、「非合理性」とは一体どのようなもので、何を為すべきなのか。それは「ひと」としての徳であり、それを地域に還元する帰属意識であり、他者の幸福を願う思い遣りであり、共生する心意気であると考えています。それらが「まち」に根付くことで、個人の資質は善い社会を創造する「文化」に昇華するのです。「ひと」が「ひと」をつくり、形のない文化としての「まち」を形成していく。それが「まちづくり」の本質であると私は確信しています。貴研究所には、その知見を大いに発信し、地域社会のオピニオンリーダーとして「まち」「ひと」「文化」づくりに邁進していただきたくお願い申し上げます。末筆ながら、貴研究所の益々のご発展を心より祈念し、お祝いの言葉とさせていただきます。善い社会を創造するまちづくり新世紀甲府城下町研究会 会長 小宮山 要