ブックタイトル山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

ページ
54/110

このページは 山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌 の電子ブックに掲載されている54ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

20th Anniversary493千メートル級の山々に囲まれ、地形的に半閉鎖型地域でありながら、豊富な日照時間と自然に恵まれた山梨県。真空の宇宙空間にあり、物が出入りしない閉鎖系でありながら、太陽光と赤外線によりエネルギーは出入りする地球。両者は物質とエネルギーの観点からよく似た性質を備えている。この共通性から、筆者は「山梨は地球のミニモデル」と捉え、世界初の持続可能社会実現の方策を考えてきた。持続可能社会とは「未来世代のニーズを損なうことなく現代世代が発展する社会」を意味する。持続可能社会の阻害要因、つまり未来世代のニーズを損なう最大の要因は「地球温暖化」である。その点山梨は、豊富な日照時間、適度な降水量、豊かな自然から、再生可能エネルギーにより化石資源に頼らないCO2ゼロの持続可能社会を世界で最初に実現する条件を備えている。ところが、これまでほとんど議論されてこなかった阻害要因「少子高齢化」が顕在化した。少子高齢化は、国が直面する課題であることは周知であるが、持続可能社会実現という観点からも避けられない課題である。少子高齢化が未来世代のニーズを損なう最大の要因は、高齢者が生産年齢世代や子供たちに残す負荷である。財務省によると、わが国の公債残高は2017 年度末で865 兆円、国民一人当たり約688万円となる。経済社会総合研究所の試算によると、公的年金の年代別年金の受益と負担は、1950 年生まれの人は502 万円の受益であるが、2015 年生まれの人は501 万円の負担となる。背景には社会保障給付費がある。2015 年度の給付費は116.8 兆円で年金56.2 兆円、医療37.5 兆円、介護福祉等23.1 兆円。これに対し保険料64.8 兆円、国と地方負担の合計44.6 兆円となっている。2016年の高齢化率は27.5%であるが10年後には32% まで増大し、さらに26 兆円増加すると予想されている。社会保障費については、誰がどのように負担するべきか国も考えている。しかし重要なのは、負担者や負担割合が変化しても年金や医療費、介護費などの給付費用が減少するわけではない点である。持続可能社会のためには、給付総額そのものを削減することが重要となる。削減方策の一つがシャドーワーカーの活用である。シャドーワーカーとは「家庭で家族のためにおいしい料理や家族の面倒を見ているのに給料をもらっていない者、付加価値を生み出す能力を備えているのに活躍の場がない者」を意味する。シャドーワーカーの代表が、意欲があり活動できるのに働く場がない高齢者である。総人口の30%前後を占める高齢者は、従来の生産と消費とは違った形態の大きなマーケット形成の可能性がある。付加価値を生み出すのも、その付加価値を買うのも、高齢者であり、それぞれの生活速度とスタイルにあった時間と空間の中でマーケットを形成することができる。それは高齢者自身、生き生きと活動する場となり、年金給付額を減少させ、健康長寿を実現し、医療介護経費の削減を可能にする。併せて、高齢者が集うことにより、クールシェアのような省資源や省エネルギーを実現する。たとえば少子化で空き教室や廃校となった小学校の教室を使い、学び、運動、食事、歌い、おしゃべりなど多様な活動の場を確保する。高齢者が自分たちにふさわしい生き生きとした活動を通して付加価値創出と介護予防を同時に実現する新たな集いの空間が期待される。このような少子高齢化時代の持続可能社会のモデルを山梨の地から実践することが今重要と考えている。少子高齢化時代の持続可能な社会づくり山梨大学 名誉教授 鈴木 嘉彦