ブックタイトル山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

ページ
56/110

このページは 山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌 の電子ブックに掲載されている56ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

20th Anniversary51山梨県でも人口減少が深刻だ。昨年の人口は、32年ぶりに83 万人を下回った。一年間で5千人もの減少だ。県外への転出が県外からの転入を上回る「社会減」に歯止めがかからない。山梨県の社会減は、2010 年からの累計で1万4千人近く、20 代に限ると1万5千人にも及ぶ。婚姻・出産適齢期の若者を失うことで少子化が加速し、さらなる人口減少に繋がっている。地方で人口減少が進む一方、対極でやり玉に挙がるのが、「東京への一極集中」だ。出生率が全国で最低の東京に人口が集中することで、日本全体の人口減少に繋がるとの指摘もある。だから「東京一極集中」を止めて、地方への分散を進めるべきだという。しかし、ここには認識の誤りがある。確かに都道府県別では、過去5年間の人口増加率は、東京が沖縄を除き最も高い。とはいえ、市町村レベルでは、福岡市や札幌市などの中核都市の人口は、東京23区と同等かそれ以上のペースで増えている。一極ではなく、多極的に集中が進んでいるのだ。便利なところには、自然と人が集まる。そこには小売やサービスなど新たなビジネスが誕生し、新たな雇用も生み出す。こうした動きが発生するのは、集中に経済の効率性を高める効果があるからだ。それを人為的に防ぐことは非生産的だ。東京への集中を非難するよりも、どうしたら山梨県で人口集中を実現できるかを考えるべきだ。山梨県は、人口密集地域の人口が全体に占める割合という基準で人口集中の度合いをみると、全国で2番目に低い。5年前との比較でも集中度が低下している数少ない県だ。こうした状況は、幾つもの問題を招く。第1に、第3次産業が発展しない。第3次産業の多くは、人を直接的に相手としており、一定以上の人口(需要)が近接商圏内に存在しないと、ビジネスが成立しない。人口密度が低いほど、労働生産性は落ち、賃金水準も抑えられる。第2に、男女の出会いの機会が限られ、恋愛や結婚に繋がりにくい。未婚化は少子化に直結する。第3に、行政サービスの維持が困難化する。上下水道など公共インフラの老朽化が進む中、サービス範囲を縮小するか、料金を引上げるかの選択を迫られるようになっている。 さらに上述の第3次産業発展の遅れは、同分野への就職を希望する若年層の県外転出に繋がっている。県外への転出者の就職先では、「卸売・小売業」、「サービス業」、「金融・保険業」といった第3次産業が上位に並ぶ。実は、第3次産業は女性労働者の割合が多く、管理職に占める女性の比率も高い。女性が活躍し易い職場なのだ。その集積の遅れは、若年女性の眼に山梨の魅力の乏しさと映っている可能性がある。県の調査でも、大学生が県内に就職しない理由として、「都会に住んでみたいから」との回答と並んで、女性では「希望する就職先が無い」とする人が際立っているのだ。人口の集中とは、「街の賑わい」だ。街の賑わいは自然と生まれるもので、行政が押し付けることは出来ない。過去に多くの自治体で、「人集めが先決」とばかりに駅ビルなどの箱物を整備したが、その後テナントが抜けて、事業赤字が重く圧し掛かっている例は多く存在する。行政の役割は、行政サービス拠点を物理的に集約する以外は、環境作りに徹するべきだ。交通インフラ整備や区画整理に加えて、自治体保有の不動産を活用したり、空き家・空き地の有効利用を仲介することで、民間の活力を引き出して欲しいものだ。人口集中と女性活躍で山梨の創生を日本銀行 甲府支店長 竹内 淳