ブックタイトル山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

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概要

山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

20th Anniversary55私の研究室は「開発途上国のインフラ、都市地域計画」を専門にしており、開発協力の現場実習を目的として、地方創生のフィールドワークを通じて実践経験を積ませるようにしている。私が着任した2015 年から、峡南地区の南巨摩郡富士川町を対象にまちづくり活動を支援しており、山梨総合研究所にも「富士川まちづくりシンポジウム」の開催などでご協力をいただいている。富士川町でまちづくり支援を開始した契機は、JTBコーポレートセールス等が事務局を務める「大学生観光まちづくりコンテスト2015」において、富士川町の空き家を利用し、拓殖大学八王子国際キャンパスが位置する八王子・多摩地区の学生、特に留学生を本町に招致する「プロジェクトYターン!」と題する事業提案を行ったことによる。本提案は、同町が東京から近距離に位置するという利便性を活かし、観光や合宿などを通じて東京西部の八王子・多摩地区の学生、特に留学生およびデザイン・芸術専攻の学生を対象地区へ呼び込むものとして設定した。対象地区は「山梨」にあること、山梨は地域住民の結びつきである「結(ゆい)」と呼ばれる相互扶助関係を有していること、対象地区と八王子・多摩地区の相互間をゆるやかに「結びつける」活動であることから、頭文字である「Y」を用いてプロジェクト名を「プロジェクトYターン!」と命名した。 地方出身の人が一定期間の都市の生活を経て故郷に戻る「Uターン」、都市の人が地方で生活を始める「Iターン」、そして最近では都会生活を経て他の地域に移る「Jターン」と都市から地方へと人が流入するパターンは色々ある。しかしそれらは全て一つの方向の流れであり、相互間の交流を図る形態ではない。我々は、都心に近い山梨の立地性は、一方通行ではなく、むしろ相互間で行き来する「Y」の行動様式の方が相応しいと考えている。地方創生の大きな課題は、なんといっても東京都心部への一極集中である。「プロジェクトYターン!」は、若者など人の流動を甲府を中心とした山梨圏域へ延伸しようとする試みであり、いわば新しい甲州街道の実現である。都心を結ぶ鉄道網の充実、圏央道や中部横断自動車道など道路網の整備、さらにはリニアの開通などにより交通面での本事業提案の実現可能性は高まっている。あとは地域内の拠点づくりであり、そのためには各自治体が魅力あるまちづくりを目指していくことが肝要であろう。さて、本学をはじめとする八王子の学生が山梨のまちづくりに参加する意義はどのようなものがあるだろうか。まちづくりに必要な要素は「よそ者、若者、ばか者」とよく言われる。このうち、地方が地方創生に取り組むうえで、絶対的に不足しているのが、よそ者であり、若者の存在である。八王子市は大学・短大・高等専門学校25 校、学生数11万人を誇る全国でも有数な学園都市である。私の研究室のように地方創生を学ぼうとする学生も多く在学している。この圧倒的なボリュームゾーンに加え、近距離に位置するという立地性はフィールドワークを実施するうえで極めて魅力的である。山梨側も八王子など東京西部の大学へ積極的に調査研究、観光、合宿などの勧誘活動を行い、山梨の魅力をさらにPRしていく働きかけも重要である。富士川町と本学は本年9月24 日にまちづくり活動支援などを柱とする包括協定を結んだ。私たちと山梨県のまちづくり活動はいよいよ本格化していくことであろう。プロジェクトYターンで山梨へ若者の流れを呼び込めまちづくりを通じた拓殖大学の山梨県への取り組み事例より拓殖大学 国際学部国際学科教授 徳永 達己