ブックタイトル山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

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概要

山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

20th Anniversary59山梨総研が創立20 周年と聞いて驚きました。わたしの前所属先の山梨県環境科学研究所の設立が平成9年(1997 年)で、山梨総研より1年早いということを初めて知ったからです。わたしは山梨県環境科学研究所の設立と同時に、山梨医科大学から同研究所に異動しました。環境科学研究所へ移るにあたり、新たに「保養地学」という学問分野を打立てられないだろうかと考えました。山梨に来る前、わたしはドイツに2年間留学していました。留学先は、バート・ナウハイムという保養地でした。普段は人口が2万人(当時)くらいの小さな町ですが、暖かい季節になると保養客が押し寄せ人口が4万人にもなると言われていました。訪れた人々は、4週間くらいはこの町に滞在していくのだそうです。バート・ナウハイムは、なだらかな丘と森に囲まれ、炭酸泉があり、心臓病の治療と研究で有名な病院と研究所があり、アール・ヌボーの建物が点在し、古代人が鉱泉から塩を作っていた遺跡や、ロシア皇帝が避暑に訪れていた歴史もあるなど、自然と文化ともに恵まれた環境にあります。しかし、わたしが一番不思議に思ったのは、この地を訪れた保養客がなぜ4週間も同じ場所にいられるのか、ということでした。わたしは、山梨医科大学では生理学教室で自律神経の研究をしていました。環境科学研究所に移ったのを契機に、生理学という枠組みを超えて「保養地学」という視点で、“保養客が、なぜ4週間も同じ場所にいられるのか”ということを考えてみたいと思いました。環境科学研究所では、森林を使った活動や高原や水辺の環境の構成要素などが人の心と身体に与える影響について実験を行いました。このような実験の結果が、ヘルスツーリズムやウェルネスツーリズムに科学的な根拠を与えることで、県内の地域づくりや保養地の質の維持・向上に繋がることを期待しました。初めのうちは、県外出身者のわたしに県内での情報発信ルートが乏しかったせいか、反響はほとんどありませんでした。ところが、3年目くらいから県内の講演会や勉強会などに呼ばれることが多くなり、実験と講演で大忙しという状態になりました。そのきっかけは、山梨総研の中田裕久調査部長が、わたしの研究に注目して下さったことです。中田部長主宰の山梨県森林セラピー研究会の会員にしていただき、「森林セラピー推進指針」(山梨県森林環境部、平成18年)にわたしの研究成果が取り上げられました。山梨総研の「環境健康ビジネス研究会」にも何度も呼んでいただき、その都度、新しい実験結果を紹介することができました。このようなことを通じて、県内で実施される地域活性化事業の企画にもいくつか関わることができました。わたしは現在、健康科学大学にいますが、大学の若手教員たちの研究を山梨総研の研究会などで紹介させていただいています。その中には、山梨総研の研究員との共同研究に発展したものもあります。健康科学大学は昨年度、北杜市との連携協定を結び、増富地域の再生事業の支援も行っています。地域の研究成果を掘り起こし、ニーズに繋げるという山梨総研の活動に大変感謝しています。今後もこのような活動に力を注いでいただくことを望みます。“なぜ4週間も同じ場所にいられるのか”という疑問への答えは、まだ見つかっていませんが、地域振興や地域再生にとって大切なヒントがその中に隠れているような気がします。山梨総合研究所による地域の研究成果の活用健康科学大学 特任教授 永井 正則