ブックタイトル山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

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概要

山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

64富士山が世界文化遺産になって以降、富士山周辺では文化遺産紹介のための情報発信拠点が充実してきた。富士吉田市のふじさんミュージアム、富士山世界遺産センターがその代表である。ところが、富士山の自然についてのまともな情報発信拠点は富士山周辺にはない。博物館、ミュージアムと名乗る施設は少なくないのだが、その実態は土産物販売が主体であったり、学術的レベルが不十分なものが殆どである。世界有数の火山としての富士山があっての文化遺産である。火山としての富士山の生い立ちや、富士山に生息する動植物、火山防災についての情報発信が貧弱なのは、はなはだ残念である。かつては、富士急ハイランドに富士山科学館があった。火山としての富士山を学べる施設として、研究者の間でも有名であったが、20 年ほど前に閉鎖され、いまでは別のアミューズメント施設で置き代えられている。富士山を訪れる外国人、特に西欧からの観光客は、道端に転がるスコリアや溶岩などを見て、いつの時代の噴火によってもたらされたのか、どのような噴火だったのかなどと矢継ぎ早にガイドたちに質問を浴びせかける。しかし、彼らの知的欲求を満足させるガイドは数少ない。さらに、年間200 万人もの訪問客を迎える5合目にある施設の実態は土産物屋で、富士山の自然を解説する拠点はない。欧米でも火山は国立公園などになっている場所が多いが、立派なビジターセンターが整備されている。解説書や地図、実物資料などが充実した施設、いうならばその地域に密着した科学博物館が準備されているのである。訓練を受けたガイドが様々な解説をおこない、訪問客の質問に答える。このため、周辺の自然観察路や山頂を目指す訪問客のほとんどは最初にこの施設を訪れ、必要な知識や資料を入手するのである。もちろん、ここで知的好奇心を満足させる時間を費やすこともできる。日本の自然公園にはこのような機能を持つ施設は殆どないが、富士山5合目に模範となる施設を作ってはどうだろうか。5合目を訪れる観光客が富士山の自然、火山としてのなりたちや世界の火山との違い、火山噴火と防災、また富士山に生息する動植物について学ぶことができる科学博物館を設置するのである。上野の国立科学博物館にはよく訓練されたボランティアのガイドが活躍しているが、ここにも地元住民のボランティアガイドを配置するのが良い。また、5合目を中心として、1時間程度で富士山の自然に触れることができる複数の自然散策コースを整備すべきである。富士山5合目を、土産が買えるだけでなく、富士山についての知識も学べ、自然を楽しめる場所に変革するのである。この科学博物館には、5合目から山頂を目指す人たちのために、登山道沿いの岩石や地形についての展示や解説もあるとよい。山頂に達するまでに、景色だけでなく、登山道周辺の岩石の由来や意味合いを学びつつ登山を楽しむこともできるようになるだろう。このような趣旨を説けば、国立科学博物館の富士山支所を誘致することも不可能ではあるまい。なにしろ富士山は世界の注目を集める、日本を代表する火山なのである。富士山科学研究所と国立科学博物館の研究者が展示・解説の監修を行えば、世界でも一流の学術情報発信基地ができる。このような施設は、修学旅行のターゲットとして日本各地から学生・生徒を集めることもできるであろう。これを地方創成、地域活性化の目玉にできないだろうか。富士山5合目を知の発信と地方創成の拠点に山梨県富士山科学研究所 所長 藤井 敏嗣