ブックタイトル山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

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概要

山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

68現在の日本の社会、経済を取り巻く環境は、少子高齢化、人口減少、技術革新による構造的変化、グローバル化等大きく変革しています。この課題に対応するキーワードは「働き方改革」です。今、働き方改革がなぜ必要なのかと分析してみると次の三点に集約されます。①労働力人口の減少と高齢化が予測されることです。生産年齢人口(15 歳以上65 歳未満)が減少する中、現在の失業率は3% 程度と完全雇用の状況にあり、人手不足が全国的に深刻化しています。持続的な成長を遂げるためには、働き方改革を進めることで多様な人材の活躍を促す必要があります。②日本経済全体で生産性を高めることです。最大の従業者を持つ流通サービス業は、「顧客第一主義」のもとフェイス・ツー・フェイスの接客を非常に重視しているため労働集約的にならざるを得ません。これは顧客の理解を得て改善していくべきです。企業としては働いている人のモチベーションを高め、生産性を上げて業績を向上させる意識が大切です。③「イノベーション」(新しい産業、価値を生み出すこと)の波が第4次産業革命(AI、ロボット、IOT、ビッグデータ、シェアリング・エコノミー)として広がりつつあり、そのスピードが速まっています。生産性を高めるためには日本全体で「イノベーション」と「制度変革」を同時に進めていかなくてはなりません。ここで、現在マスコミ等で報道されている政府の「働き方改革実現会議」の四点のテーマの内容と課題を見てみます。①長時間労働の是正です。現在の日本の労働時間は先進国と比べると米国より短く、欧州各国よりやや長い状況です。それが仕事と子育て、介護との両立を困難にしていると言われています。働く人の健康第一という観点から、これまでの経済成長を支えてきた慣習、例えば朝から晩まで働いている社員を「よく頑張っている」と評価する意識や風土を変えていく必要があります。課題として、既存分野の効率化による生産性向上では限界があり、中長期的には新規分野への資本や労働のシフトによる生産性の向上が問われています。②同一労働同一賃金です。近年多様な働き方を望み、非正規を選択する人が増えてきているが、非正規率40%は高すぎます。このテーマは誤解されがちですが、内容は同じ職場で働く人は同じ賃金になるということではありません。職責や能力、成果に差があれば当然賃金には差があります。問題は、合理的に説明できない不合理な格差が存在することです。非正規では頑張っても賃金は上がらず、正規への転換のハードルが高いのに、正規であれば努力をしなくてもある程度まで賃金が上がっていきます。このような合理的に説明できない格差は是正していくべきです。③女性、高齢化、外国人など多様な人材が活躍できる環境整備です。女性で過去に仕事を辞めた人が学びなおして復帰しやすい「リカレント教育」を強化する必要もあります。高齢者の就労は、7割近くの人が65 歳を過ぎても働きたいと願っているのに、実際は2割に止まっているという統計があります。高齢者が能力を発揮できる場所で社会に貢献し、生きがいや健康を得られる社会の実現を望みます。④柔軟な労働市場です。日本の労働市場を取り巻く環境は第4次産業革命の進む中で大きく変化しています。新しい技術を身に付け、新しい仕事にチャレンジしていく、企業間、産業間でも自由に移動できる制度が必要だと考えます。課題は、現状の終身雇用制度や退職金制度等の人事制度への対応です。以上の審議がまとまり、秋の臨時国会に提出されるそうです。まとめとして、「働き方改革」は分けた議論が必要です。大企業と中小企業、製造業と非製造業、大都市圏と地方などです。特に日本の99%余りを占める中小企業の「手業」や「感性」の強みを持つ仕事は、時間の制約を受けずに取り組まれています。「働き方改革」は行政に言われたから進めるものではなく、私たち企業に必要不可欠のこととして積極的に取り組む必要があります。働き方改革の成果と課題山梨県経営者協会 会長 丸茂 紀彦