ブックタイトル山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

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概要

山梨発の地方創生に向けて 公益財団法人山梨総合研究所 創立20周年記念誌

20th Anniversary89私が山梨県庁から山梨総研に出向していたのは、平成25 年度から平成27 年度までの3年間である。この間に、たくさんの刺激的な仕事上の経験と普段では会えない方々との出会いがあった。さらにバックボーンが異なる多くの研究員と一つ一つのプロジェクトを完成させていったこと自体、新たな発見の日々であった。このことは、現在の勤務先である山梨県立農業大学校において、様々な社会経験を持つ生徒に対する授業や進路指導に大きく役立っているし、民間企業や地域活性化団体の新しいプロジェクトを支援する際にも役立っている。さて、昨今話題になっているように、今後、日本の人口・地域の人口は大きく減少し、活力が低下していくと予想される。それらに対応していくためには、地域住民が現状を正確に把握し、外部から人材を導入し、今まで触れ合わなかった人材を融合することが必要であると私は考えている。特に人材の融合は、新しいビジネスの創出につながっていく。人材の融合はテーマとして大変難しく多数のトライアルがなされているが、多くの事例では融合を促進するには、触媒となる人材もまた必要となる。触媒となりうる人材の育成はとても難しい。その中にあって異なるバックボーンを持つ者が集まりプロジェクトを進める山梨総研の業務自体が、実は触媒的な人材の育成に大きく貢献していると感じる。実際に、山梨総研のOB・OG たちの触媒的な活躍は現場にいても聞こえてくる。山梨総研自体は、シンクタンクとして地域の知恵袋であることが本来の姿であるが、触媒となりうる人材のインキュベーションルームとなっていくことに私は大いに期待している。山梨総合研究所に期待すること山梨県立農業大学校 専任講師 千野 正章アダム・スミスは「砂漠においては、ダイヤモンドは無価値である。」と指摘した。異論もあろうが、高価な装飾品であるダイヤも砂漠での価値は小さく、一方、何気なく飲んでいる水は砂漠では大きな価値を持つ。これが使用価値の本質で、価値=価格ではなく、スミスに続くリカード、マルクスなどの古典派経済学者を困惑させた。当時の経済学は政治経済学で、国家発展のために有益な理論を構築する必要に迫られ重要性は理解するものの、計量不可能な使用価値を理論化できず、この不一致に悩み続ける。悩みに終止符を打ったのは、市場において需給の均衡点で価格が形成されるという一般均衡理論=新古典派経済学と、国民経済のレベルから生産や所得などの関係を数量的にとらえ、マクロ的均衡点を政策的に調整しようとしたケインズ理論=マクロ経済学である。両者の共通項は、顔の見える人々の生活の場面で価値を捉えるのではなく、完全競争の下で合理的な判断を行う不特定多数のAやBが経済社会を構成していると前提し、その下で市場価格を数量的に分析すること。ここに至って、実名を持った生活者ではなく機械的な存在であるAやBが貨幣に擬制された価格のみに縛られ競争を続けることが重要となる。さて、IoTで全ての物がネット上で捕捉され、それをAIが判断することで豊かな産業社会が到来するという。本当だろうか。私は、新古典派以来の思想に支配される限り私たちは本当の豊かさを取り戻せないのではないかと危惧する。しかし、もしもこの技術革新がそれ以前の「使用価値を大切にする生活者の世界」を少しでも取り戻すように利用されるならば、と密かな期待を抱いている。古典派経済学者の悩みと新しい産業社会山梨県産業労働部 理事 / 産業技術センター 所長 手塚 伸