人と地域がつながる工夫
毎日新聞No.699【令和7年9月28日発行】
先日、私の住んでいる地域で神社のお祭りが開催されることを知り、足を運んでみることにした。このお祭りは、私が小学生の頃に参加したことがあり、当時は若者から高齢者まで幅広い年齢の方々で賑わっていた記憶がある。懐かしさを感じながら神社を訪れたのだが、当時よりもだいぶ参加者が少なくなっていた。これも少子高齢化や自治会活動の縮小が影響しているのだろうか。
そもそも自治会とは、同じ地域に住む方たちが、安全で安心に暮らすことができる住み良いまちづくりを目指して自主的に活動を行っている地域住民の組織であり、地域住民の交流を目的にしたイベントの開催や、地域の関心を高めてもらう情報共有も行っている。しかし、こうした情報共有は回覧板での周知が中心で、自治会に加入している人には情報が伝わるが、それ以外の地域にあるアパートや宿舎に住んでいる人には、地域の情報が十分に届かない仕組みになっている。私自身、お祭りの準備をしているのを見てお祭りがあることを初めて知り、掲示板のチラシを直接見てようやく内容を知ることができるほどであった。
情報が十分に届かないのは、自治会活動の縮小による経費削減や、そのアパート自体がチラシ等をお断りしているかもしれないなど様々な理由が考えられる。しかし、地域での居住年数が短くても、この地域のことを知りたい、この地域のために何かしら力になりたい、と考える人は意外といるのではないだろうか。河川清掃やお祭りの手伝いなど、できることがあれば積極的に参加したいと考えているのに、情報を得るのが難しいことが理由で活動に参加できないのは、非常にもったいないことである。
大事なことは、少子高齢化によって自治会活動を縮小せざるを得なくなっても、人とのつながりを作り、維持するためにはどうしたらいいかを考え、工夫することではないだろうか。地域の情報共有にしても、回覧板だけでなく、ホームページやSNSなど、お金のかからないやり方は数多くある。地域にどれだけ長く暮らしたかではなく、地域の役に立ちたいという人との交流が広がっていくことを期待している。
(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 藤原 佑樹)