高齢者の幸福とつながり


山梨日日新聞No.79【令和8年2月16日発行】

 古くから「無尽」という助け合いの文化が根付く山梨県。人と人との「つながり」は本県の誇るべき資産の一つであり、全国トップクラスの健康寿命を語る上でも、重要な背景の一つとして挙げられてきた。だが、近年深刻化する高齢者の孤立は、本県も例外ではない。そこで、弊財団が今年度山梨県民を対象に実施したWEBアンケートで、高齢者の幸福度とつながりの関係を分析したところ、つながりの強さの陰にある実態が浮き彫りとなった。

 まず、高齢者の幸福度を就業や婚姻の有無で分類して比較したところ、最も低かったのが「独身で無職の層」であり、特に男性でその傾向が強く見て取れた。その要因としては、男性は人間関係を仕事に依存しがちであり、退職と同時につながりの大部分を失うことによるのではないかと考えた。
 その根拠を探るため、60歳以上の男性を「幸福度」と「つながり」の2つの軸で分析した。その結果、確かに全体としてはつながりが強いほど幸福度が高いという傾向が確認された。しかしデータを詳しく見ると、その傾向に当てはまらない層も存在した。そこで、「幸福度」と「つながり」の平均値を中心に、図のとおり高齢者を4つのタイプに分類した。

 図の右上に位置するのは、幸福度が高くつながりも強い「充実した人々」。地域活動の担い手として集まりに参加し、仲間との時間を楽しむ。既存のコミュニティで十分に幸せを感じる、山梨の「つながり」の成功モデルだ。
 図の左上に位置するのは、幸福度は高いがつながりが希薄な「孤高の人々」。地域とは距離を置きつつも、趣味や仕事で自己完結した幸せを感じている。一人の時間は孤立ではなく自由なのだ。このタイプを無理につながりの輪へ連れ出すことは、かえって幸福度を下げる恐れがある。必要なのは無尽のような強いつながりではなく、世間話程度のゆるやかなつながりや、ICTなどを活用した「静かな見守り」だろう。
 これら2つはいずれも幸福度が比較的高いタイプであるが、残る2つのタイプは、冒頭の独身無職層の大半が分類される幸福度が比較的低いタイプだ。
 ひとつは、図の右下に位置するつながりは強いにもかかわらず幸福度が低い「つながりの中で苦しむ人々」。近所の人を信頼し、相談相手もいるが幸福度は低い。データが示す要因は、健康不安と自己肯定感の低さである。周囲と自身の不調を比べたり、家族などの話題についていけず寂しさを感じたりしてしまう。輪の中にいるからこそ、かえって自信を失う様子が見て取れる。必要なのは身体のケアや、感謝され頼りにされることで、自らの価値を再確認できる関わりだ。

(公益財団法人 山梨総合研究所 研究員 望月 泰介