応援は自分の力になる
山梨日日新聞No.73【令和7年10月13日発行】
近年、「推し活(おしかつ)」という言葉が広く浸透している。「推し活」とは、世代や性別を問わず多くの人々が、アイドルや俳優、アニメキャラクター、スポーツ選手などの自分が好きな存在、つまり「推し」を応援する活動全般のことを指す。推しが出演するライブやイベントへの参加、グッズの購入など、推し活の方法はさまざまである。また、推し活は人と人をつなぐ力も持っており、同じ推しを応援する仲間との交流は、SNSやファンコミュニティを通じて広がり、リアルな友人関係に発展することもある。推し活を通じて得られる「共感」や「連帯感」は、現代社会における孤独感の緩和にもつながるなど、推し活は単なる趣味の域を超え、個人の生活や社会、さらには経済にも影響を与える文化となっている。
全国の10歳から69歳までの男女1,380人を対象にしたWeb調査に基づく、株式会社博報堂と株式会社SIGNINGがまとめた『オシノミクスレポート』によると、3人に1人の割合で「推し」があると回答しており、ない人よりも幸福度が高いことがわかった。「推し」がある人たちにとって、「推し活」はもはや生活の一部となっており、人生に欠かせないものとなっていることがうかがえる。
その中で筆者が特に興味深い結果だと感じたのは、「推し」がある人の、推し活におけるお金の捉え方である。推し活の消費目的は、「推し」への応援や感謝であるが、「推し」にお金をかけること自体は、「推し」への愛情表現や成長への投資といった意味合いにとどまらず、「自分をいきいきさせるためのもの」であるということだ。一見、推し活は「推し」への愛情表現や応援といった一方通行の消費として捉えられがちだが、実際には、「推し」のための消費が巡り巡って自分のためになるということを理解し、自身の生きがいとして活動している人が多いことがうかがえる。だからこそ、誰よりも「推し活」に時間やお金をかけて、熱心に「推し」を応援している人もいるのだろう。一方で、愛情深く、自身の生きがいとして活動しているからこそ、過度な消費や依存、ファン同士のトラブルなどが問題視されることもある。推し活を健全に楽しむためにも、自分の生活とのバランスを保ち、他者への配慮を忘れないことが重要である。
また、推し活を通じて新しい「推し」が見つかることがある。筆者が推し活で県外のある地域を訪れた際、あるお店で飲んだコーヒーの味が忘れられず、今ではネットでそのお店のコーヒー豆を注文するほど好きになった。それからその地域の特産やふるさと納税など、その地域のことを調べるきっかけとなり、人生の幅を広げてくれる可能性を持っている。
「推し」のある人からすると、推し活は、趣味でもあり、生きがいでもある。推し活のかたちは人それぞれで、誰を推すか、どう推すかは自由であり、推し活に正解はない。また、「推し」といえるほどの熱量がなくても、まずは「好き」だと感じることから始まるのではないだろうか。自身が好きなものを応援したい、他の誰かにも共有したいという積極的な気持ちが、推し活につながるのだと感じている。そして、推し活や応援する行為は、個人の心を豊かにし、社会をつなぎ、経済を動かす力を持っている。推し活が生み出すポジティブなエネルギーは、これからの社会においてますます重要な役割を果たしていくだろう。
(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 藤原 佑樹)