健康寿命「実直さ」が鍵?


山梨日日新聞No.82【令和8年4月27日発行】

 「人生100年時代」と言われる今、すでに人生の後半戦に入った私にとって、健康はますます気になるテーマになっている。厚生労働省が発表した令和4年の都道府県別健康寿命で、山梨県は男性が73歳で全国3位、女性は76歳で4位だった。令和元年度と比べるとそれぞれ順位は下がったものの、依然として全国上位を維持している。その背景にある山梨の生活とは、一体どのようなものかについて統計から探ってみたい。  
 まず感じるのは、山梨県の暮らしが実直であることだ。令和3年社会生活基本調査によると、山梨県は全国平均と比較して、「趣味・娯楽」に使う時間が短い傾向がみられる。令和7年の家計調査でも、車や住宅などの生活を支える固定的な支出の負担が大きい半面、趣味・娯楽や教育、外食などの支出が控えめだ。日々の暮らしを堅実に回すことに重きを置く県民性がうかがえる。

 仕事の面でも山梨らしい特徴がある。人口に対する働いている人、あるいは働く意志のある人の割合を示す労働力率は高齢期でも高く、70歳代で40%以上と全国平均を上回っている。農業や人手不足が深刻化する製造業などの就業人口割合が高い本県には、高齢になっても働き続けやすい環境があるのだろう。仕事時間が長いことで、気分転換やストレス解消のための余暇時間が削られやすいのも事実である。しかし、こうした実直な生活の積み重ねが、山梨らしさなのかもしれない。
 一方、健康維持への意識も高い。厚生労働省によると、令和5年度の山梨県における特定健診の受診率は全国5位を誇る。生活習慣病やその予備群の割合は年齢とともに増加するものの、生活習慣の改善を促す「特定保健指導」を完了した高齢者の割合は、全国平均と比較すると突出して高い。高齢になっても健診を受け続ける、個人の健康に対する関心の高さに加え、それを支える支援のしくみや施策も、高い健康寿命を誇る山梨の強みであると言える。
 しかし、不安材料もある。働き盛りの40歳代男性は、生活習慣病やその予備群の割合は全国平均よりも高く、肥満、血圧、血糖などの生活習慣病リスクは、年齢とともに男性で高まる傾向がみられる。また、令和4年度の県民1人あたりの医療費を見ても、生活習慣病に起因する心臓や血管といった循環器系の疾病割合が比較的高いのが現状だ。趣味や娯楽、スポーツなどで身体を動かす機会が少なく、移動を自家用車に依存していることも、こうした傾向に拍車をかけているのではないだろうか。
 今の健康寿命は長いからといって、次世代の健康寿命の長さが必ずしも保障されているわけではない。生涯にわたり健康な生活を送るためには、若いうちから心身ともに健康な生活習慣を心がけることも大切だ。 

 幸いなことに、私自身は今のところ健康に大きな不安を抱えているわけではない。それでも、年齢とともに体力の衰えを感じることは増えてきた。統計が示すとおり、私もしばらくは仕事を続けることになりそうだが、それは経済的な理由だけではなく、心身を健やかな状態に保つことや、社会的つながりを保つことにもなるはずだ。ただ、それだけでは十分ではない。仕事に加えて、趣味やスポーツの時間を大切にしながら、健やかで幸せな老後への備えをしていきたい。

(公益財団法人 山梨総合研究所 調査研究部長 佐藤 文昭