山梨初のコミュニティ財団
山梨日日新聞No.55【令和6年11月25日発行】
多くの県民の方は耳にしたことはないかもしれないが、全国には一般社団法人全国コミュニティ財団協会(以下「協会」という)とその会員となるコミュニティ財団が、北は北海道から南は沖縄県まで29団体設立されている。最も古くは1991年設立の大阪コミュニティ財団で、最近では今年の3月に一般財団法人ぐんま未来基金が、4月に一般財団法人HATA(高知県幡多地域)がそれぞれ設立されている。
そもそも「コミュニティ財団」とは何か。協会の定義によると、その発祥は1914年のアメリカに遡る。その目的は、他の財団法人とは異なり、①地理的な「コミュニティ=地域」を特定して、②子ども・子育てや女性活躍、高齢者や障がい福祉、生活困窮、若者の孤立・孤独、防災・減災、環境、教育など、地域で生じている社会的諸課題を対象に、③その課題解決のために、市民や実際に現場で活動しているNPO等のソーシャルセクター、さらには地域コミュニティ全体で寄付や休眠預金を含めた様々な形で資金を調達し、④その資金を基に解決のための活動に助成を行うとともに、⑤そうした活動の伴走支援を行うことを通じて、社会的諸課題の先にある当事者のニーズに応えながら、地域コミュニティの中で資金循環の仕組みづくりを行うこととされている。
「休眠預金」とは、2009年1月1日以降の取引から10年以上、その後の取引のない預金のことで、内閣府が所管する休眠預金等活用事業を通じて、地域課題の解決を行う実行団体の活動資金として活用する事業や、そのための資金分配を行う事業、さらにはコミュニティ財団の設立を支援する事業などの様々な形で活用されている。
このコミュニティ財団の設立を支援する事業では、2023年度、「コレクティブインパクトを生み出すローカルファンド創生事業」として公募が出され、山梨県からは任意団体の甲斐の国コミュニティ基金設立準備会(以下「準備会」という)が応募し、準備会を含め全国で5団体が採択された。山梨県では初の採択となる。
準備会では、「甲斐の国コミュニティ基金創生事業―いま求められる真のコミュニティの形成」として、県民の中でNPOなどのソーシャルセクターや中間支援組織に対する理解を深め、住民の自治によって自立した持続可能なコミュニティの形成をはかることを目的に2024年度から3年間の事業を開始している。
筆者はその準備会の事務局として携わっているが、本県でのコミュニティ財団設立までにはまだまだ課題も山積しており、設立後も継続的に取り組みを進めていくためには、多くの県民の理解と協力が不可欠である。準備会が当初掲げた「真のコミュニティ」は、県民の誰もがいつでも参加することができ、安心して安全に過ごせる心地の良い「居場所」であり、地域における社会的諸課題解決に対する共感の下、それを県民自身が自分たちで創っていくことを想定している。そのためには、これからより多くの県民やNPOなどのソーシャルセクター、民間公益活動に関心のある民間企業と一緒に、山梨の未来を一緒に考えていくことが求められている。(準備会に関するお問い合わせは→yamanashi.community.fund1126@gmail.com まで)
(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 宇佐美 淳)