一(いち)スキーヤーの抱負
毎日新聞No.680【令和7年1月5日発行】
スキーファンが心待ちにしていた季節がやってきた。早速年末に長野に初滑りに行ってきたが、私と同世代を含む多くのスキーヤーが、久しぶりの雪の感触を楽しんでいた。
学生時代、スキー部の先輩から「先行動作」という言葉を教えてもらった。その意味は、ターンの後半に次のターンに入る準備をするのための動作、と記憶している。
スキーは力学である。ターンで丸い弧を描くと雪面から身体に力がかかることで、身体は自然と弧の内側、つまり斜面の山側に倒れる。しかし、次のターンに切り替えるためには、この力に逆らって身体を斜面の谷側に移動させる必要がある。その時に必要なのが先行動作である。
最近、特に私が意識しているのは、「視線」である。ターンの後半に、次のターンで自分が進みたい方向に視線と意識を向ける。それによって、雪面からの力をうまく利用し、スムーズに次のターンに入ることができる。しかし、視界が悪かったり雪面が凸凹したりしていると、恐怖心から視線が足元に落ち腰が引けてしまう。すると次のターンへのきっかけがつかみにくくなる。しかし、こうした不利な条件であっても、しっかりと視線をキープすることで、しなやかに安定して滑ることができるものである。つまり、力を司るのは私たちの意識である。
さて、私たちは2025年という新しい年を迎えた。しかし、この先必ずしも晴天ばかりとは限らない。足元も平坦ではない時もあるだろう。だからといって、足元ばかりに囚われていると、新たなターンを始動することはおろか、ちょっとした凹凸にも足をすくわれかねない。
そんなときには、少し先の目標に意識を向けてみてはどうだろうか。ゆっくり大きな弧を描くのもよし、素早く小さな弧を重ねていくのもよい。どんな弧を描くかは自分次第ではある。しかし大切なのは、外からの力を最大限に生かし勇気を持って新たな目標へと切り替える、そのタイミングを逃さないことだ。
私自身、歳とともに気力体力の低下は避けられないのが現実である。それでも、身体と心のバランス保ちながら、自分なりの目標を持ちつつ納得できるシュプールを描いてみたい。スキーも、そして2025年も。
(公益財団法人 山梨総合研究所 調査研究部長 佐藤 文昭)