働く意義と向き合う
毎日新聞No.712【令和8年3月29日発行】
年明けから年度末にかけて慌ただしく過ごす中、友人や知人から「来年度から転職します」という知らせを受けることがいくつかあった。家庭の事情から柔軟な働き方を求めての転職や、キャリアアップのために新たな環境を選ぶ転職など、その理由は様々である。いずれも今後の人生の歩み方を悩み抜いた上での決断だと思うが、こうした話を聞くたびに、目の前のことに必死で、将来のキャリアプランが明確になっていない自分は、このままでよいのかと不安に駆られることがある。
かつての「就職」とは、一つの会社に入れば長く勤めることが当たり前とされ、組織に所属し続けること自体が価値とみなされていた。個人のキャリアは会社の内部で積み上げられ、転職は例外的な選択とされることも少なくなかった。しかし現在では、多様な働き方や価値観が広がる中で、就職は「キャリアの一つ」として捉えられるようになっている。「どこに属するか」よりも「どのように働くか」が重視され、さらに起業や副業といった選択肢も現実的なものとなった。個人が自らの意思で働き方を選び直すことが、以前よりも自然なものとなり、働き方の幅は確実に広がっている。
こうした変化は、「働く意義の変容」と深く結びついているのではないだろうか。働くことを通じて、「自分はどうありたいのか」「どのように社会と関わるのか」といった問いが、これまで以上に重視されているように感じている。
だからこそ、「自分は何のために働くのか」「自分の人生にとって何を大事にしたいのか」を問い続けることが重要なのだろう。その問いに向き合うことで、今の場所で働き続けることにも、新たな環境に移ることにも、それぞれ意味を見出すことができる。
もっとも、いざ自分と向き合ったとしても、その答えがすぐに見つかるとは限らないし、答えを急いで求めること自体が重要ではないのかもしれない。むしろ、不安や迷いを抱えながらも、「なぜ働くのか」という問いを持ち続けることこそが、これからの時代における働き方の軸になるのではないだろうか。転職するかどうかにかかわらず、その問いに向き合い続けること自体が、自分なりのキャリアを形づくっていくのだと思う。
(山梨総合研究所 主任研究員 藤原 佑樹)