Vol.335 データからみた山梨県民の健康と今後の課題
公益財団法人 山梨総合研究所
調査研究部長 佐藤 文昭
1. はじめに
「人生100年時代」と言われる今、すでに人生の後半戦に入った私にとって、健康はますます気になるテーマになっている。厚生労働省が発表した令和4年の都道府県別健康寿命で、山梨県は男性が73.47年で全国3位、女性は76.16年で全国4位だった。令和元年と比べるとそれぞれ順位は下がったものの、依然として全国上位を維持している。本稿では、その背景にある山梨の生活とは、一体どのようなものか、さらには、県民の健康を取り巻く状況を分析することにより、将来にわたり健康寿命を維持していく上での課題について、統計データから探ってみたい。
2.山梨県民の暮らしの特徴と変化
2.1.全国平均との比較
社会生活基本調査とは、日本人が毎日をどのように過ごしているかを調査することで、生活の実態を把握することを目的に、総務省が5年毎に実施している基幹統計調査である。
直近の調査は、令和3年に行われたものであるが、この調査結果から、山梨県民の暮らしの特徴についてみてみたい。
調査では、20種類の行動別に調査しているが、このうち全国平均と比較して山梨県民(男女別)の行動者率について特徴的な項目を下図にまとめる。
まず、「仕事」については、男女ともに全国平均よりも行動者率が高くなっている。また、「休養・くつろぎ」や「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」といった余暇活動については、男性において全国平均よりも高くなっている。一方で、「趣味・娯楽」や「買い物」、「スポーツ」については、男女ともに全国平均よりも低い傾向がみられる。

図 1 性別の行動者率(全国・山梨県)
また、山梨県民において行動者率の高い「仕事」及び「休養・くつろぎ」と、行動者率の低い「趣味・娯楽」の行動者率について、年齢別のグラフを以下にまとめる。
「仕事」では、特に65歳以上の行動者率が男女ともに全国平均よりも高いことから、高齢期においても仕事を通じて社会とのつながりを維持している人が多いことがうかがえる。「休養・くつろぎ」については、55~64歳を除く年齢において、男性の行動者率が高い傾向がみられる。「趣味・娯楽」については、特に45歳以上において男女ともに5%程度低くなっている。

図 2 年齢別の行動者率(全国・山梨県)
山梨県民における「仕事」の行動者率の高さは、他の統計データからも垣間見ることができる。人口に対する働いている人、あるいは働く意志のある人の割合を示す「労働力率」についてみた場合、令和2年国勢調査の年齢別データにおいて、65歳以上の割合が全国平均と比較して5%以上高くなっていることが分かる。

図 3 年齢別の労働力率(全国・山梨県)
また、「趣味・娯楽」の行動者率の低さは、家計支出の結果からも把握することができる。令和7年家計調査(家計収支編)における勤労者世帯1世帯当たりの1カ月間の支出をみると、全県ではなく甲府市のみのデータではあるものの、全国平均と比較して「教養娯楽」や「外食」の支出が少ないことが分かる。それ以上に、「食費」や「教育」、「保健医療」の支出も全国平均を下回っている。「食費」の低さについては食事の質と量、「保健医療」については、治療のみならず健康維持のための予防的支出の制限にもつながる可能性がある。
一方で、「自動車等関係費」や「自動車等購入」が全国平均よりも大幅に高くなっている。また、自動車検査登録情報協会によると、令和7年3月時点における山梨県の世帯当たり自家用車普及台数は、全国11位の1.49台であり、全国平均の1.01台を大きく上回っていることからも、日常生活における自家用車への依存度の高さを裏付ける結果となっている。[1]
甲府市の可処分所得は、全国平均と比較して102千円低いのに対して、消費支出の差は27千円である。その結果、可処分所得に対する実際の消費額の割合を示す「平均消費性向」は、全国平均の65.0%に対して甲府市は74.2%と9.2%高くなっている。このように、家計のゆとりが少ないことに加え、自動車関連費をはじめとした固定費が高いことが、食費や保健医療費、教養娯楽関連支出の弱さにつながっている可能性があると考えられる。

図 4 1世帯当たり1か月間の支出(勤労者世帯、全国・甲府市)
表 1 世帯当たり1カ月間の可処分所得及び消費支出(勤労者世帯、全国・甲府市)

2.2.行動者率の経年変化
高齢期においても仕事に従事する割合が高く、休養やくつろぐ時間を確保する一方で、趣味・娯楽の行動者率が低いといった今日の山梨県民の傾向は、過去からどのように変化してきたのであろうか。それを把握するため、5年毎に行われている社会生活基本調査を20年間遡り、その間に山梨県民の行動がどのように変化したのかを調べた。
下図に示すとおり、「テレビ・ラジオ、新聞・雑誌」は、平成28年以降大幅な減少傾向にあり、また、「交際・付き合い」についても緩やかではあるが継続して減少傾向がみられる。特に平成28年から令和3年については5%の減少が見られるものの、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛等の影響も考えられることから、今後の推移が注目される。「趣味・娯楽」は、平成13年以降徐々に増加がみられたものの、平成28年以降は減少に転じている。
一方で、「休養・くつろぎ」は平成28年以降増加傾向がみられるものの、その他は概ね横ばいである。

図 5 主な行動者率の経年変化(山梨県)
さらに、過去20年間の変化を把握するために、直近の令和3年と平成13年における、性別でみた山梨県民の主な行動種類別の行動者率の差をまとめたグラフを以下に示す。
全体的に見ると、行動者率が増加している活動よりも減少している活動の方が多いことが分かる。増加している活動としては、男性の「家事」が約15%増加している半面、女性は5%以上減少していることから、過去20年間で男女における家事の分担が進んだことが分かる。
一方、減少した項目については、男女ともに「テレビ・ラジオ、新聞・雑誌」が20%を超える減少となっている。また、「交際・付き合い」や「移動」、「仕事」などの行動者率も減少傾向にある。

図 6 山梨県民の行動者率の変化(R3-H13、総数・性別)
これらの結果から、山梨県民の行動の特徴は以下の通りまとめることができる。
はじめに、山梨県民は全国と比べて「仕事」の行動者率が高く、特に高齢層でその傾向が強い。これは、高齢期にも社会参加や役割を持ち続ける人が多いことを示しており、健康寿命の長さを支える可能性があると考えられる。
また、休養・くつろぎの行動者率は一定程度高い一方で、趣味・娯楽、スポーツ、買い物などの行動者率は全国を下回る。特に中高年層で趣味・娯楽が低いことは、余暇の多様性や運動機会、地域活動への参加機会の面で課題となり得る。
さらに、20年間の推移では、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌、交際・付き合い、移動などが減少しており、生活行動の範囲や対面交流が縮小している可能性がある。男性の家事参加の増加など望ましい変化もみられるものの、孤立予防、身体活動量の確保、地域でのつながりづくりを意識した取組みが重要である。
以上を踏まえると、山梨県の健康長寿は、働くことによる社会参加や比較的規則的な生活意識といった「実直さ」に支えられている面がある。一方で、運動・余暇・交流の弱さ、自動車依存、若年から中年男性のメタボ関連リスクといった課題が併存していると整理できる。
3.特定健診の状況
3.1.特定健診の受診状況
健康を維持する上で、生活習慣病を予防・早期発見するため、40歳から74歳までを対象に実施される特定健康診査(以下、「特定健診」という。生活習慣病の兆候を早期に確認するための健診)の受診状況について調べてみる。
厚生労働省による令和5年度都道府県別特定健診受診率によると、山梨県の特定健診の受診率は63.8%で、全国平均の59.7%を上回り、全国6位の高さとなっている。

図 7 特定健康診査の受診率(都道府県別)
また、平成20年度から令和5年度までの特定健診の受診率の推移をみると、全国・山梨ともに、コロナ禍となる令和2年度を除いて増加傾向にあり、平成20年度と比較すると約1.5倍に増加している。その間、山梨県の受診率は全国を4%前後上回る割合で推移している。

図 8 特定健康診査の受診率の推移(全国・山梨県)
特定健診の受診者割合は増加傾向にあるものの、まだ4割弱は未受診となっているが、実際に受診しなかった理由はどのようなことか。
国民の生活実態を把握し、国の社会保障施策の立案や運営に必要な基礎資料を得ることを目的に厚生労働省が実施している国民生活基礎調査において、特定健診を含む健診等を受診しなかった理由を聞いている。令和4年度の調査結果によると、複数回答で「心配な時はいつでも医療機関を受診できるから」が3割台で最も高く、次いで「時間がとれなかったから」、「めんどうだから」などとなっている。
年齢別では、「心配な時はいつでも医療機関を受診できるから」が高齢になるにつれて高くなり、また「時間がとれなかったから」や「めんどうだから」は若い年代で高く高齢になるにつれて低くなる傾向がある。

図 9 健診等を受診しなかった理由(R4、山梨県、性別・年齢別)
3.2.メタボリックシンドローム関連者の状況
特定健診の結果、受診者数に対するメタボリックシンドローム(内臓脂肪の蓄積に高血圧・高血糖・脂質異常などが重なり、生活習慣病のリスクが高い状態)の該当者及び予備群(以下「メタボ関連者」という。)の割合を下図にまとめる。全国平均が28.8%であるのに対して、山梨県の割合は28.0%で、全国11番目の低さとなる。
性別・年齢別にみると、40歳代では、特に男性のメタボ関連者の割合が全国平均を上回る割合であるのに対して、55歳以上では、男女ともに全国平均を下回り、高齢になるにつれてその差が大きくなる傾向にある。
また、令和5年度と平成20年度の差についてみてみると、男女ともに40~50歳代では2%増加しており、男性については、65~69歳では9.3%、70~74歳では7.4%と大幅な増加がみられる。

図 10 メタボリックシンドローム関連者率(R5、全国・都道府県)

図 11 メタボリックシンドローム関連者率(R5、山梨県)

図 12 メタボリックシンドローム関連者率の推移(R5-H20、山梨県、性別・年齢別)
ただし、メタボ関連者の中には、既に医療機関で治療中であったり服薬中の場合もある。このことから、性別年齢別に、メタボ関連者のうち服薬していない人の割合を以下にまとめる。その結果、男女ともメタボ関連者率は年齢とともに増加傾向にあるのに対して、メタボ関連者中の未服薬者の割合は、40~44歳では7割以上と高いものの年齢とともに減少し、70歳以上では2割程度となっている。特に40歳代の男性はメタボ関連者の多くは未服薬者であることから、生活習慣の改善による生活習慣病の予防効果が期待されると考えられる。

図 13 メタボ関連者中の未服薬者の割合(R5、山梨県、性別・年齢別)
3.3.特定保健指導の実施状況
厚生労働省のデータによると、令和5年度における山梨県の特定健診受診者数に対して、健診で健康リスクが見つかり生活習慣の改善支援が必要と判定された特定保健指導対象者数[2]の割合は15.6%である。性別・年齢別にみると、メタボ関連者の割合と同様に、40歳代男性の割合が全国平均を上回るものの、55歳以降は全国平均を下回る結果となっている。

図 14 特定保健指導対象者率(R5年、山梨県、性別・年齢別)
特定保健指導は、リスクの数や腹囲・BMIの状況により、積極的支援または動機付け支援に区分される。積極的支援は、生活習慣病リスクが比較的高い人が対象に、医師・保健師・管理栄養士などと生活改善計画を立て、3か月以上の継続的な支援を受けながら、食事・運動・喫煙などの改善に取り組む内容となっている。また動機付け支援は、メタボリックシンドローム予備群など、積極的支援ほどリスクは高くないものの改善が必要な人を対象に、原則として初回面接を中心とした支援で、自分の健康状態を理解し、生活改善に取り組むきっかけをつくることを目的としている。[3]
令和5年度における性別・年齢別にみた山梨県の特定保健指導対象者数に対する積極的支援及び動機付け支援の割合をみると、男性は、40~64歳までは積極的支援の割合が7割近くを占めているのに対して、女性は3割台にとどまっている。このことから、男性は女性と比較して特定保健指導対象者の割合が高いだけではなく、積極的支援が必要となる人の割合も高いことが分かる。なお、65歳以上は積極的支援相当であっても動機付け支援に区分されるため、年齢階級別の解釈では制度上の取扱いに留意が必要である。

図 15 支援別保健指導対象者の割合(R5、山梨県、性別・年齢別)
さらに、保健指導対象者に対する終了者数の割合は、64歳までは全国平均・山梨県ともに約3割あるいはそれ以下の割合でほぼ横ばいとなっており、男性の方が女性よりも高く、またほとんどの年齢で、山梨県の方が全国平均よりも高くなっている。65歳以上になると、男女ともに山梨県の終了者の割合が大幅に増加し、全国平均を大きく上回る結果となっている。
終了者割合が高いことは、支援を最後まで受けた人が多いことを示すものの、それは必ずしも検査値改善やメタボ解消を意味するものではない。効果を評価するには、翌年度以降のメタボ関連者数の変化を追跡する必要がある。

図 16 特定保健指導終了者率(R5、全国・山梨県、性別・年齢別)
3.4.医療機関における受療の状況
山梨県における特定健診では、40~50歳代のメタボ関連者数が増加傾向にあるが、実際に医療機関で受療している人数はどの程度いるのだろうか。厚生労働省による令和5年患者調査によると、外来の受療者率は75~84歳まで年齢とともに増加する傾向にある。このうち、35~54歳までは山梨県が全国を1割程度上回っているが、その後は徐々に山梨県が全国を下回る結果となっている。

図 17 人口10万人当たりの受療者数(令和5年、全国・山梨県)
また、性別・年齢別にみると、35~44歳では、男性の受療率は女性の半数以下、45~54歳でも7割弱であるのに対して、75歳以上では男性の受療率が女性を上回っている。

図 18 人口10万人当たりの受療者数(令和5年山梨県、性別・年齢別)
4.山梨県民の健康意識の変化
山梨県民の行動が健康に大きな影響を及ぼすのと同時に、県民の健康に対する意識の変化も、健康に影響を及ぼす一つの要因として捉えることができる。
前述の令和4年国民生活基礎調査の結果によると、山梨県民が日ごろ健康のために実行していることは、全国と比較して、「規則正しい食事」や「うす味の食事」、「バランスのとれた食事」といった食事に関する項目が男女ともに全国よりも高くなっている。一方で、「たばこを吸わない」や「お酒を飲みすぎない」、「適度な運動」といった項目については、全国平均を下回る結果となっている。
この結果は、食事面では比較的健康を意識している一方で、運動、喫煙、飲酒といった生活習慣病に直結しやすい行動では改善の余地があることを示している。

図 19 日ごろ健康のために実行していること(全国・山梨県、性別)
また、平成25年からの10年間の変化についてみた場合、「たばこを吸わない」、「お酒を飲みすぎない」及び「規則正しい食事」などについて増加傾向がみられ、男性では、「たばこを吸わない」、女性では「お酒を飲みすぎない」がそれぞれ高くなっている。しかしながら、前述の通り、いずれの項目も全国平均を下回っていることから、さらなる健康意識の向上が求められる。

図 20 日ごろ健康のために実行していることの経年変化(R4ーH25、総数・性別)
5.まとめ
5.1.データからみた山梨県民の健康の姿
以上の統計データから、山梨県民の健康寿命を取り巻く状況について以下のとおりまとめる。
山梨県の健康寿命は、令和4年時点で男性が全国3位、女性が全国4位であり、令和元年から順位は下がったものの、依然として健康寿命が長い県である。
山梨県民は、高い労働力率を背景に、男女ともに全国平均と比べて65歳以上でも「仕事」の行動者率が高い。また、男性では「休養・くつろぎ」が全国平均より高い一方で、「趣味・娯楽」「スポーツ」は男女ともに全国平均より低い傾向がある。さらに、20年間の行動者率の推移では、「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」「交際・付き合い」「移動」などの行動者率が減少している。
家計調査結果によると、甲府市の勤労者世帯では、全国平均と比べて「教養娯楽」「外食」「食費」「教育」「保健医療」の支出が低い一方で「自動車等関係費」や「自動車等購入」が高い。その背景には、全国平均を大きく上回る世帯当たり自家用車普及台数と、日常生活における自動車依存度の高さがあると考えられる。
特定健診の受診率は、平成20年度以降、全国・山梨県ともにおおむね増加傾向にあり、直近の令和5年度では山梨県は全国6位の高さとなっている。一方で、健診未受診理由では、「心配な時はいつでも医療機関を受診できるから」が最も多く、次いで「時間がとれなかったから」「めんどうだから」の割合が高くなっている。
山梨県のメタボ関連者率は、全国平均を下回っているものの、40歳代男性のメタボ関連者率が全国平均を上回る結果となっている。特に40歳代男性は、メタボ関連者の多くが未服薬であり、医療・服薬に至る前の生活習慣改善の余地が大きいと考えられる。
特定保健指導終了者率は、多くの年齢で山梨県が全国平均より高い。一方で、メタボ関連者率が全国平均を上回る40歳代男性については、医療機関の外来受療率をみると35~44歳で男性が女性の半数以下、45~54歳でも女性より低い状況であり、健診後の生活改善や必要な受療につなげることが課題と考えられる。
健康に対する意識については、山梨県民は全国と比べて「規則正しい食事」「うす味の食事」「バランスのとれた食事」など、食事に関する健康行動が高い。また、平成25年から令和4年にかけて、「たばこを吸わない」「お酒を飲みすぎない」「規則正しい食事」などは増加傾向にあるものの、直近の令和4年の調査結果では、「たばこを吸わない」「お酒を飲みすぎない」「適度な運動」は全国平均を下回っている。
5.2.高い健康寿命を維持する上での課題(仮説)
以上の結果を踏まえて、将来にわたり高い健康寿命を維持する上での課題について、システム思考のループ図を用いて、以下のとおり仮説をまとめる。システム思考のループ図とは、複数の要因が互いに影響し合う関係を矢印で示し、好循環や悪循環、抑制の働きを整理する図である。ここで示す関係は、統計から直ちに因果関係が証明されたものではなく、今後検証すべき仮説である。
(1)R1:高齢期の就労・社会参加が健康寿命を支える好循環
今回の調査で明らかになったことは、高齢期においても仕事に就いている人が多いということである。高齢期の就労が健康寿命の長さに直接つながっているとまでは断定できないが、日々身体を動かすことや社会とのつながりを持ち続けることは、健康寿命の維持にプラスに働く可能性がある。また、健康寿命が長いこと自体が、長く働き続けられる条件になっている可能性もある。
(2)R2・R3:車社会が家計と身体活動量に与える影響
自家用車による日常的な移動は、歩行など日常的な身体活動量を少なくしている可能性がある。また、全国平均と比較して自動車関連の支出が高いことは、趣味・娯楽やスポーツなどへの支出を抑える一因となり、余暇活動や運動機会の少なさにつながっている可能性がある。ただし、40歳代男性の運動不足との関係は本データだけでは直接確認できないため、今後の検証が必要である。
(3)R4:食生活を中心とした健康意識と、運動・禁煙・節酒の課題
運動に関する健康行動の弱さは、健康意識の項目からも確認できる。健康のために実行していることは、「規則正しい食事」や「バランスのとれた食事」など食事に関する内容が全国平均より高い一方で、「適度な運動」や「たばこを吸わない」「お酒を飲みすぎない」といった運動・禁煙・節酒に関する項目は全国平均より低い。このことから、山梨県民の健康意識は食生活面では比較的高いものの、運動、喫煙、飲酒に関する行動改善にはなお課題があると整理できる。
(4)R5・B1・B2:健診・保健指導による改善と、受診・行動変容の先送り
健康意識の高まりを背景に、山梨県における特定健診受診率は全国平均よりも高く、それがメタボまたはメタボ予備群の早期発見と、生活習慣の改善に向けた保健指導の利用につながることが期待される。しかし、メタボ関連者率の高い40歳代男性を含め、64歳までの保健指導終了者率はおおむね3割程度にとどまっている。保健指導を最後まで受けなかった理由は本データからは明らかではないが、40~50歳代の健診等未受診理由では「時間がとれなかったから」「めんどうだから」の割合が高い。したがって、仕事や家事など日常生活の忙しさが、健診受診や保健指導、生活改善の先送りにつながっている可能性がある。
(5)B3:現在の健康リスクによる将来の健康寿命への影響
現在、高い健康寿命を誇る山梨県ではあるが、その順位は徐々に下がっている。また、現在40~50歳代でメタボ関連者率が増加していることや、その背景にある生活習慣を踏まえると、将来、生活習慣病リスクが顕在化し、健康寿命のさらなる低下につながることが懸念される。
今年度、山梨大学を中心に、JST「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」として、「産学官連携による山梨ヘルスケア・セントラルシティ未来共創拠点形成」に取り組んでいる。山梨総研もその幹事機関のひとつとして、「住民主体で健康を守る山梨モデル」の実現に向けて、県民の健康に関する統計データの分析やアンケート調査などを実施している。
本稿は、統計データによるその調査内容の一部であるが、今後調査研究対象者へのアンケート調査などを通じてこの仮説を検証しつつ、主体的に健康をデザインするまちづくりにつなげていきたいと考えている。
図 21 データからみた山梨県民の健康と将来への課題(仮説)
[1] https://www.airia.or.jp/publish/file/kenbetsu2025.pdf
[2] 特定保健指導対象者は、メタボ関連者のうち現在服薬中の人などを除いて選定されるため、メタボ関連者数とは一致しない。
[3] https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-04-002



