参院選に見る「支持」の構図


毎日新聞No.695【令和7年8月3日発行】

 今回の参議院選挙では、参政党や国民民主党など、従来の大政党とは異なる立場にある政党が議席を伸ばした。大きな争点が見えづらいなかで、なぜこれらの政党が一定の支持を集められたのだろうか。その背景には、有権者の側にある「新しい価値を求める視線」が感じられる。

 既存の政治勢力に対する不信感や閉塞感は、以前から指摘されてきた。政策の中身もさることながら、その伝え方、距離感、スピード感といった「提供の仕方」に、共感を得られない状態が続いていたともいえる。そんな中、独自の言葉で語り、自らのメディアを通じて発信を重ねた新興政党は、「これまでとは違うもの」を望む層に対して一定の説得力を持った。
 この構図は、企業活動に通じるものがある。企業に求められているのは、様々な課題の解決であり、そのための新しい価値の創造である。成熟した市場において、新たな商品やブランドが消費者に受け入れられるのは、それが単なる代替品ではなく、独自の価値やストーリーを持っているからである。他と何が違うのか、そしてそれが自分にとってどんな意味をもたらすのかが明確であるほど、支持は強く、持続的なものになる。参院選における新しい政党の躍進も、まさに「新しい価値の創造」と「共感の獲得」という視点で捉えることができる。
 候補者の語り方や政策の打ち出し方は、企業でいえばブランディング戦略に近い。どんな社会像を描き、どんな課題に向き合うのかという姿勢が、ブランドの個性となって有権者に届いたのではと思う。特に、若者や無党派層といった、これまで動きにくいとされてきた層にアプローチしたことは、明確なターゲティングの結果といえるだろう。
 もちろん、政治とビジネスは異なるものである。しかし、政策と商品、有権者と消費者、支持と購買といった対応関係を意識することで、今回の選挙活動のあり方が、企業活動に近いものとして見えてくるのではないだろうか。

 「何を語るか」だけでなく、「どう届けるか」が問われる時代である。政治もまた、選ばれる存在であり続けるためには、日々新しい価値の創造が求められている。

(公益財団法人 山梨総合研究所 理事長 今井 久