共創がつくる新しい大学像
山梨日日新聞No.80【令和8年3月9日発行】
来月、岐阜県飛騨市に新しい大学が誕生する。Co-Innovation University(コー・イノベーション大学、略称:CoIU(コーアイユー))である。初代学長には、現在慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授の宮田裕章氏が就任する。
CoIUは、2019年11月に大学設置準備委員会を発足させ、岐阜県飛騨市を拠点とする新しい私立大学構想を本格的に始動させた。当初は「飛騨高山大学(仮称)」として検討が進められていたが、2022年3月に名称を「Co-Innovation University」に変更し、地域や企業、国内外の多様な主体と「Co-Innovation(共創)」する大学像を明確に打ち出した。
CoIUが目指すのは、「共創」を通じて社会課題を解決できる人材の育成である。従来の学部・学科中心の大学モデルとは異なり、地域、企業、行政、海外機関などと連携しながら、実社会の課題に取り組む教育を中核に据えている。具体的には、次の3点が特徴的である。
第一に、共創型人材の育成である。専門分野を固定せず、データ、テクノロジー、デザインなどを横断的に学び、異なる立場の人々と協働しながら新たな価値を創出する力の涵養を目標としている。
第二に、地域を起点としたグローバル展開である。拠点は岐阜県飛騨市に置きつつ、地域課題を「世界の縮図」と捉え、ローカルからグローバルへと発展するモデルを志向している。
第三に、プロジェクトベースの教育である。講義中心の学修にとどまらず、実際のプロジェクトを通じて学ぶPBL(Project-Based Learning)を軸に、理論と実践を往復する学修スタイルを重視している。
要するに、CoIUは「知識を教える大学」ではなく、社会とともに未来を設計する大学を目指していると言える。
一方、山梨県でも高等教育における新たな取り組みが進んでいる。山梨県立大学では、2028年度に「メイカーズ学科(仮称)」の新設が計画されている。ものづくりと生活が密接に結びついた山梨県の特性を踏まえ、ものづくりを理解した人材(メイカーズ)を育成するための学科である。コンセプトは、①通常の週1回の授業だけではなく、週末や合宿などで集中的に学ぶ「インテンシブ教育」の導入による自由度の高いカリキュラム設計、②「地域に根ざした哲学・技術」から「最先端の機器・ソフトウェア」までを理解する人材の育成、③地域で必要な人材は地域で育てる、の三点に整理される。地域全体を学びのフィールドと捉える点にも特徴がある。
また、山梨大学でも、地域課題の解決に資する人材を養成する「社会デザインサイエンス学環(仮称)」を2028年度に新設する方針が示されている。工学部や生命環境学部など既存4学部の分野を横断的に学べるカリキュラムを構築し、地域企業などと協働しながら課題解決に取り組む実践的な学びを提供する。「学環」とは、学部横断・融合教育の枠組みを提供し、学生が多様な知識とスキルを身につけることを可能にする仕組みとして位置づけられている。
これらの取り組みは、文部科学省の「地域活性化人材育成事業~SPARC(スパーク)」の一環として進められている。山梨大学が山梨県立大学の協力を得て採択されたもので、地域社会や産業界と連携した教育プログラムの開発と、それを支える大学間連携や高大連携の枠組み構築が重点テーマとなっている。
新しい学びへの動きは全国的に加速しており、山梨においても多様な試みが進行中である。筆者自身も、これまで大学教育に関わってきた経験を活かし、山梨における新しい学びの創出に引き続き関わっていきたいと考えている。
(公益財団法人 山梨総合研究所 理事長 今井 久)