人口減少時代のプロデュース力


山梨日日新聞No.83【令和8年5月18日発行】

 総務省が55日の「こどもの日」に合わせて毎年公表している15歳未満の子どもの推計人口(202641日現在)は、前年より36万人少ない1329万人となり、1982年から45年連続の減少となった。比較可能な1950年以降で過去最少を更新している。
 また、山梨県の推計人口も202641日現在で777642人となり、52年ぶりに78万人を下回った。出生303人に対し死亡900人と自然減が続くなか、転出超過も続いている。
 人口減少の深刻さは年々増している。子育て世代からは、「同年代の遊び相手が少ないことが、転出を考えるきっかけになる」といった声も聞かれる。また、就職を控えた大学生世代の転出理由としては、「希望する職種が少ない」「賃金格差がある」といった点がよく挙げられる。
 ただ、最近の若者を見ていると、それだけでは説明しきれない変化も感じる。

 連休中、筆者は大学生約30人と酒席を共にした。驚いたのは女子学生たちの「飲みっぷり」だ。テキーラを何杯も飲み、男子学生が先に潰れそうになっている。一方で、「コース料理になかったので、どうしても食べたかった」とネギトロ丼を追加注文する女子学生もいた。
 もちろん、多量飲酒を肯定したいわけではない。ただ、そこには以前とは異なる空気があった。
 かつては、このような飲み会の場での女子学生たちは「女の子らしさ」をどこかで演じていたようにも思う。お酒は弱い方がかわいい。小食の方がかわいい。愛想が良い方がモテる。男性を立てた方が良い―。
 しかし最近の若い世代を見ていると、そうした「かわいいと思われるための振る舞い」を以前ほど重視していない。
 この変化を象徴するのが、20242025年にかけて実施されたオーディション番組『No No Girls』の熱狂だろう。女性アーティストのちゃんみながプロデュースしたもので、応募者たちは、例えばこれまで体型を理由に「NO」を突きつけられるといった否定されてきた経験や自身を押し殺してきた経験を抱えている。
 「No Fake(本物であれ)」「No Laze(誰よりも一生懸命であれ)」「No Hate(自分に中指を立てるな)」というコンセプトのもと、誰かの理想に寄せるのではなく、否定されてきた過去さえも「これが私だ、をさらけ出せ」と鼓舞され、それに応えて自身と向き合い、自信のある顔つきに変化していく姿が印象的で、多くの若者を惹きつけた。
 山梨の学生たちを見ていても、恋愛でもファッションでも「人からどう見られるか」より「自分が好きか」を基準にしている姿が増えたと感じる。

 この感覚は消費や働き方にも繋がっている。人からどう見られるかより、そのスタイルに自分が納得できるか。最近、地域の小さな店や個人発信のイベントにも人が集まるのは、若者たちがそうした自分の感覚を大切にする空気を敏感に感じ取っているからではないか。
 こうした感覚は、就職活動にも色濃く表れているように感じる。冒頭で書いたとおり、彼らは将来への不安が強い世代だからこそ条件には非常にシビアだ。しかし、条件さえ良ければ満足かといえば、決してそうではない。彼らは、生活基盤を確保した上で、その場所が「自分の感覚を偽らなくてよい場所」なのかを冷徹に見極めている。
 人口減少が進む地域や企業もまた、単に条件を提示するだけでなく、一人ひとりの「自分らしさ」をどう生かしていくかという、“ちゃんみな”さながらのプロデュース力が問われているのではないだろうか。

(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 渡辺たま緒