宝飾業界の活性化は


毎日新聞No.17 【平成10年10月15日発行】

~課題多く、共栄の道探る~

 水晶宝飾連合会主催によるタイの宝飾業界の視察に同行させていただいた。

 高い成長を続けてきたタイは、昨年発生した通貨バーツの暴落に端を発した 経済の混乱によってバブルが崩壊し、大変な不況にあえいでいる。

 3年前の首都バンコクは、大変ひどい交通渋滞であったが、活気ある町とい う印象であった。しかし、今回訪ねてみると、交通渋滞は相変わらずだが、バブル 崩壊の影響は大きく、いたるところでビル建設が中断され、高速道路も工事途中で 雨ざらしになっていた。日本人向けの有名な歓楽街、タニヤ通りも人通りは少なく、 客引きの女性が店の前にずらりと並んでいた。

 タイの宝飾産業は、国民総生産(GNP)の5%を占める基幹産業の一つで ある。山梨県とのつながりも予想していた以上に深く、バンコクから離れた地方で も、宝飾の関係者であれば、「ヤマナシ」の名前が出てくるそうである。

 しかし、この業界も、他の産業と同様に不況の影響を大きく受けている。バン コクを訪れる業者の数は大幅に減少し、海外バイヤーの仲介業者が入居している トレードセンターにも空き室が目立っていた。

 今回の視察は、業界の活性化を探るため連合会会長が事前の現地調査を行い、 旅行社に委託せず、すべて手づくりで企画したそうである。それだけに参加者の視察 に対する姿勢は真剣そのもので、有名な寺院の見学など観光的なメニューは皆無であった。

 トレードセンターの訪問、宝飾産業専門の工業団地見学、輸出組合幹部との 意見交換会など、これからの両国宝飾産業の発展を考えるうえで、大変参考になっ た。しかし、宝飾業界が抱えている課題は多く、また深いものがあり、両国の関係 をより一層密にする中で、共栄の道を探っていきたいものである。

 会長をはじめ、参加した皆様の業界発展を願う熱意に心から敬意を表したい。

(山梨総合研究所主任研究員・村田俊也)