自治体のIT化
毎日新聞No.82 【平成12年 8月 9日発行】
~地域行政変革のカギ握る~
効率的で高い水準のサービスを提供する政府・行政部門の構築を目指す取り組みが進められている。我が国政府が世界最高水準の「電子政府」を実現することを目指したプロジェクトがそれである。
この電子政府プロジェクトでは、2003年までに民間と政府間の行政手続きがインターネットで行える基盤の構築を目標として掲げている。ここでは、申請・届出等の手続きにおいて、現在フロッピーベースでの提出が認められている書類をインターネットを通じて提出できるようにしたり、通産省、運輸省、郵政省など6省庁において手続きの電子化の先導的な取り組みの実施や、公共事業を除いた政府調達手続きの電子化を進めることにしている。さらに、中央省庁のネットワークである霞ガ関WAN(統合通信網)と地方自治体間を結ぶ総合行政ネットワークを接続するための実証実験も行われる。
こうしたIT(情報技術)による我が国政府の革新は、同時に地方政府の革新をもたらすことになる。
これまで情報化に先進的に取り組んできた自治体は、地域住民に均一なサービスを提供し、行政事務の効率化・迅速化に務めてきた。こうした取り組みを発展させ、情報化先進自治体では、地方公共団体間や国とのネットワーク化を進め、電子化された行政情報の効率的な交換・提供による行政事務の更なる効率化・迅速化や住民サービスの高度化を目指す取り組みを始めようとしている。
具体的には、地方公共団体間での情報交換や情報共有を実現したり、霞ガ関WANとの相互接続により、より広範な情報共有の実現を図ることにしている。こうした取り組みにより、地方公共団体と国との文書交換や、法令、条例、基礎的統計情報等の既存のデータベース等、国と地方公共団体で相互利用が可能な各種情報の共有化を推進し、行政事務の更なる効率化・迅速化を進めようとしている。また、霞ガ関WANとの相互接続により、国と地方公共団体間のより緊密な連携、協力を実現するとともに、住民生活に必要な行政情報の提供や、申請・届出等手続の電子化など、国と地方公共団体を通じた一体化された行政サービスの提供により各種住民サービスの高度化を図ろうとしている。さらに、情報化の進み具合がまちまちな地方公共団体の情報化格差を是正するとともに、各省庁が業務別に構築する情報通信ネットワークの地方公共団体側の重複投資を抑制することを目指している。
こうした公共ネットの進展により高度に情報化した電子自治体の出現は、行政部門における業務や組織のあり方に根本的な変革を迫るだけでなく、行政、市民、企業間のコミュニケーションをより密接にするものと考えられる。今後、2003年までに我が国政府だけでなく、自治体におけるIT化への取り組み姿勢が、成熟社会における我が国並びに地域の変革のカギをにぎっていると言える。
(山梨総合研究所主任研究員・窪田洋二)