JR中央線の所要時間短縮
毎日新聞No.94 【平成12年12月20日発行】
~現実的な論議を~
甲府―新宿間を1時間で結ぶという構想が再び注目されている。JRが以前に打ち出したものだが、1時間で結ぶことにそれほどメリットがあるだろうか。
県の調査によると、15分短縮するためにも、線路の改良などの投資を行うと2000億円以上かかるという。しかし、巨額の投資により構想が実現した暁には、受益者負担の考え方に立てば、運賃の値上げが予想される。現状では個別路線の運賃値上げはできないだろうが、通常運賃と比べて割引率30%のあずさ回数券や割引率40%のかいじクーポンが廃止される可能性は十分ある。30分の時間短縮と比べれば、一般県民には割引運賃の廃止による損失のほうが大きいのではないか。
そこで、1時間構想の実現に代わり、ずっと少額の投資で実現できるであろう類似の効果が見込まれる案を三つ提案したい。
第1は、朝一番で新宿に到着する特急列車の所要時間の短縮である。現在、甲府―新宿間は、日中1時間半から1時間45分程度で結ばれている。しかし、朝一番に新宿に到着するかいじは2時間、次着のあずさは1時間50分かかっている。この時間帯は通勤時間の最中であり速度アップは無理との意見もあろうが、通勤特快の新設が行われていることや景気低迷などに伴う混雑率の低下を考慮すればダイヤの改善は可能ではないか。
第2に、上記が無理であれば、午前6時台に特急を1本新設できないだろうか。以前に、「おはようかいじ号」という臨時特急が休日運転されたことがある。この列車は午前8時過ぎに新宿に到着している。平日では若干余計にかかろうが、八王子からの通勤者も含め利用者は見込まれよう。
第3は、新型車両の導入である。スーパーあずさに使われている車両は従来の車両に比べてカーブなどでの高速走行が可能である。この車両にかいじまですべて置き換えれば、10分程度の短縮は可能ではないか。現状は、停車パターンの違いを考慮しても、所要時間は列車によりかなりばらつきがある。これが実現すれば、現在午後10時に新宿を出発する最終特急の出発時刻を繰り下げることもできよう。
1時間構想の求めるものは、基本的にはビジネス客を中心とした訪問先の滞在時間の拡大であろう。一民間企業の経営を圧迫するような整備新幹線問題の二の舞いを避け、現実的な議論をすべきである。
(山梨総合研究所主任研究員・村田俊也)