「多様な働き方の実現のために」
毎日新聞No.117 【平成13年12月18日発行】
-ワークシェアリング導入に向けての検討を-
現在、小泉政権下において聖域なき構造改革が進展するなか、不良債権処理に伴う企業倒産や失業者増が見込まれており、雇用を取り巻く環境は厳しさを増す状況にある。
総務省から発表されている労働力調査結果によると、平成13年7月の全国の完全失業率(季節調整値)は5.0%と、昭和38年(1963年)の調査開始以来、初めて5%台に達し、10月には5.4%と過去最悪の結果となっている。また、県内の有効求人倍率の状況では、全国的には高いレベルにあるものの、IT関連産業の業績不振等を背景に悪化傾向にあり、7月の季節調整値で0.94倍と、17ヶ月振りに1倍を切り、10月には0.79倍(4ヶ月連続1倍割れ)と過去最低の結果となっている。
このような状況に対し、国や地方公共団体等では、雇用の安定確保と新市場・新産業の育成による雇用創出を図るための様々な対策を行っているところであるが、すでに雇用政策単体としての取り組みでは限界に来ているのが実情であり、今後、雇用の維持・創出を図っていくためには、新たな社会的な取り組みが必要となっている。
こうしたなか、企業による雇用の維持や新たな雇用の創出という観点から、「ワークシェアリング」への関心が高まっている。ワークシェアリングとは、労働者一人当たりの労働時間を短くし、雇用されている労働者と失業者または雇用されている者の間で、仕事を分かち合い、恒常的に労働時間を短縮し、雇用機会を創出しようとするものである。その実施にあっては、一時的な景況の悪化を乗り越えるために、短期的・緊急避難的な対策としての効果が期待されるが、少子高齢化の進展による労働力人口の減少、社会経済の急激な構造転換、若年者等に見られる就業意識の変化等を踏まえると、将来の雇用拡大につなげていくための中長期的な取り組みが必要である。参考として、オランダでは、フルタイム・パートタイムに関わらず、税制・社会保険制度・労働法上、労働時間の長さに比例して均等に扱われる「パートタイム経済」が実現され、雇用機会の創出が図られている。
わが国においては、ワークシェアリングの導入は今後の議論によることとなるが、年齢や性別に関わらず、各人がその能力を発揮しうる雇用環境を整備していくためには、ワークシェアリングの導入は一つの選択肢として意味あるものと思われる。
(山梨総合研究所・主任研究員 田辺伸一)