海外からの旅行客が増加
毎日新聞No.122 【平成14年 3月12日発行】
~自由貿易協定が後押しか~
日本国民による国内旅行は、ここ数年のわが国経済の低迷を映じ、伸悩みが続いている。
国民一人当たりの国内での平均宿泊旅行回数は、平成10年に2.69回となってからは、2年続けて前年を下回り、平成12年には2.56回に低下している。 民全体では国内宿泊旅行の延べ回数は、平成10年の340百万回から平成12年には325百万回へと4.4%減少した。
これに対し、外国人による日本旅行は着実に伸びている。訪日外国人旅行者数は平成12年までの5年間、年平均7.3%の伸びを見せ、平成12年には過去最高の476万人を記録した。訪日外国人旅行者の増加は、特に、アジア地域からの旅行者の増加によるところが大きい(同5年間で年8.6%の伸び)。アジアからの旅行者の訪日外国人旅行者に占めるシェアは、平成7年の60.3%から12年には64.1%へと上昇している。
訪日外国人旅行者が増加する中、外国人旅行者の山梨県への来訪はどうなっているであろうか。観光白書によると、外国人旅行者の山梨への訪問率はこのところ上昇傾向にあり、平成7年度の3.7%から11年度には5.9%へと上がっている。訪問率の都道府県別の順位も、同期間に14位から9位へとランクアップしている。なお、奈良など伝統的観光地への訪問率は低下傾向にある。
さて、本年1月、わが国とシンガポールの間で、経済連携協定が調印された。これは、相互に関税撤廃を行う自由貿易協定(FTA)を軸に、人材交流や投資促進など、幅広い分野での関係強化を目指すものである。シンガポールの他、シンガポール以外のアセアン諸国や韓国などとも協定締結に向けた動きが始まっている。協定締結までには、時間がかかると見込まれるものの、中期的には日本とアジア諸国間の人の往来は、確実に増大し、それに連れて、わが国への外国人旅行客も増加しよう。
外国人旅行客のマーケットは、規模としては依然小さいものの、今後、確実な伸びが期待される分野である。上で見たように、目下のところ、山梨においては、海外からの旅行客をうまく取込んでいるように思われる。将来的にも、中期的視点に立って、一層の増加が見込まれる海外からの旅行客の県内誘致に向けて、さらなる工夫が期待される。
(山梨総合研究所・調査研究部長 波木井昇)