地方税の徴収率改善
毎日新聞No.161 【平成15年10月 7日発行】
東京都に学ぶ他自治体
長引く不況の影響で地方税収入が伸び悩んでおり、自治体は地方税の徴収率改善に積極的に取り組み始めた。こうした状況下、短期間で徴収率を向上させた東京都主税局の取り組みに注目し、都から徴税のノウハウを学ぼうとする自治体が増えている。
県税務統計書によると、現年度と滞納繰越とを合わせた都税徴収率(収入額/調定額)は、95年度90.5%から01年度96.5%へと、6年間で6ポイントも向上している。これは、滞納者に対して休日・夜間を含めた催告や預貯金・給与・不動産の差し押さえといった徴収努力を続けてきた成果である。特に、現年度の収入額を95年度2.1兆円から01年度2.9兆円に増額し、調定規模が大きい現年度の徴収率を95年度97.2%から01年度99.0%に向上させた成果によるところが大きい。
ただし、現年度の徴収率向上の要因には、97年度の地方消費税導入や、01年度の外形標準課税方式導入によるところもあり、必ずしも徴収努力だけの成果とも言い切れない。特に、収入額が7千億円を超え、徴収率が100%になる地方消費税導入による影響は大きい。
さらに、徴収率向上の要因として、不納欠損処分による効果を見のがしてはならない。不納欠損処分は、将来、収入される可能性がある債権を何らかの理由で放棄する行為である。不納欠損処分は、徴収率の分母を構成する要素の一つである滞納繰越の調定額を減少させるため、結果として徴収率を向上させるが、分子である収入額の増加には結びつかない。都税の滞納繰越の調定額は、95年度2,011億円から01年度972億円に減少しており、徴収率は向上しているが、滞納繰越の収入額そのものは95年度348億円から01年度221億円へと減少している。
自治体が都の取り組みから学ばなければならないのは、みかけの徴収率の改善ではない。徴収率という比率ばかりに目が奪われていると、不納欠損処分に力が入り、収入額の増加という本質を見失うおそれがある。
(山梨総合研究所 研究員 赤尾好彦)