行政評価で切磋琢磨


毎日新聞No.261 【平成20年4月25日発行】

 先ごろ、県内の市町と県の職員で構成された自主研究会が、「新たな行政評価手法のあり方に関する調査研究会報告書」という冊子をとりまとめた。行政評価とは読んで字のごとく行政活動を評価することであり、10年ほど前から行財政改革の一つの手段として全国各地の自治体に広まってきた。県内でも28市町村のうち11市町で導入済みだ(07年10月現在)。

 現在までのところ、個別業務の実施目的や得られた成果を誰にもわかるように記述し、今後の進め方を改善していこうとする手法が一般的である。評価結果を住民と共有することで説明責任の一端を果たし職員の意識改革などに繋がることなどが期待される。
 しかし、数百から数千にのぼる事務や事業について網羅的に、かつ精緻に評価しようとすればするほど内容が専門化し、住民や議会がそれらを読み解くことは困難になる。
 そこで冒頭の研究会では、優れた他者の手法を学び改善に結びつける「ベンチマーキング」の考え方を取り入れ、従来型の行政評価とは違う角度から、住民の満足度を最大化させるためのお金や人材配分の判断基準づくりを検討した。具体的には、各市町の総合計画を分析し、政策テーマごとに共通の尺度で測り得る業務をリストアップした上で、他団体やベストプラクティス(最も優れた取組手法)と我がまちの現状の差を比較し、過不足を検証しながら改善を進める発想である。
 先行事例では、弊所も研究に参加してきたNIRA(総合研究開発機構)型ベンチマークがあるが、同研究会は対象地域を「地理的、歴史的な事情が共感できる」県内の近隣団体としたことが特徴で、こうした試みは全国的にも極めて珍しい。

  残念ながら実践段階に至っていないが、道路特定財源の一般財源化の問題、長寿医療制度(後期高齢者医療制度)の導入などを契機に、改めて公的サービスに対する負担のあり方やその使い道への関心が高まっている。こうした議論を皆で深めていく際には、このようなベンチマークが大いに役立つのではないか。県内市町村が継続して連携し、さらに広がりと深みを増していくことを期待したい。

(山梨総合研究所 主任研究員 柏木 貞光)