迷惑郵便は受取拒否を


毎日新聞No.294 【平成21年8月21日発行】

  どこからともなく送られてくるダイレクトメール(DM)。健康食品やサプリメントのチラシ、クレジットカードの勧誘、痩身グッズの広告。開封して見るならまだしも、多くはそのままゴミ箱に直行だ。大量の紙を使い、長距離を輸送され、ただ単に捨てられる。無駄以外のなにものでもない。
  米国のNGOフォレストエシックスによると、米国では毎年1000億通以上のDMなどの迷惑郵便物が配達されているそうだ。その結果、約5100万トンの温室効果ガスが排出され、これは1000万台弱の車あるいは11基の火力発電所が1年間に排出する量に等しいという。また、迷惑郵便物を生産するために、毎年1億本以上の樹木が伐採されているともしている。

  カタログ販売の盛んな米国ほどではないにしろ、我が国でもDMが郵便受けを賑わしている。直接的な広告宣伝手法として、着実に浸透しているようだ。しかし、温暖化防止に国を挙げて取り組もうとしている昨今である。資源やエネルギーの浪費は極力排除したい。
  受け取りたくないDMは、送るのを止めてもらおう。郵便なら「受取拒否」と書いた紙片を添付し、投函するか窓口に持っていけば、差出人に返送される。紙片には記名・押印をし、宛名や差出人の印字を隠さなで貼ることと、未開封の郵便物であることがポイントだ。拒否されてまで、送ってくる企業はまずない。メール便なら送付元に電話をすれば、たいがいは丁寧に対応してくれる。
  面倒に思うかもしれない。だが、毎回仕分けしたり、処分したりすることに比べれば、たいしたことはない。厚いカタログなどは、捨てるのも気が引けてリサイクルに回す、個人情報の漏洩も気になるから、宛名は細かくちぎる、そんな人も多いのではないだろうか。受取拒否を続けるうちに、確実にDMの量は減っていく。送る側の企業にとっても有益だ。見込みのない相手をリストから除き、無駄な郵便料を削減できる。

  先述のNGOは、米国人は配達される迷惑郵便物の処理に生涯で平均8ヶ月を費やしているとしている。まさにちりも積もれば何とやらだ。不要DMの拒否で、少しばかり地球環境へ貢献できる。長い目で見て、手間を省くことにもなるのだから一石二鳥である。

(山梨総合研究所 主任研究員 依田 真司)