自販機文明に黄信号
毎日新聞No.297 【平成21年10月2日発行】
わが国は世界一の自販機文明国である。現在、全国に設置されている自販機は427万台。うち、清涼飲料を販売する自販機に限ってみても227万台が稼動している。これを、人口比で見るとなんと56人に1台の割合である。ちなみに、アメリカでは783万台、人口比では72人に1台の割合である。
最近ある経済誌に「清涼飲料メーカーの自販機販売が急減、『稼ぎ頭の自販機が不振・飲料メーカーに逆風』」という記事を見つけた。量販店に比べ価格を高く設定できる自販機での販売は、清涼飲料メーカーにとって稼ぎ頭である。
しかし、なぜ、自販機販売が落ち込んできたのだろうか。長期化する不況がこんなところにまで影響しているのだろうか。それとも、消費者の生活スタイルに何か変化が現れたのだろうか。
自動販売機は、昼も夜も電気をつけっぱなしである。また、一年中温めたり、冷やしたりしている。一体、自販機はどれくらい電気エネルギーを食っているのだろうか。日本自動販売機工業会の発表によると、自販機本体の年間総消費電力量は66億㌔㍗時で、これは、600㍗のドライヤーを全国民が毎日10分間使用した消費量に相当するそうであり、国内の年間総発電量1兆1579億㌔㍗時の0.6%にあたる。
また、ある資料によると、自販機で使われているアルミ缶1個を生産するのに必要な電気は550㍗時で、60㍗の電球を10時間つけっぱなしにした量と同じだそうである。アルミ缶は1年間に350億個ぐらい使われているので、それを生産するための電力量は192億㌔㍗時、これは原発1基分(現在稼動している原発は約55基)に相当するそうである。
これがすべて自販機で売られているわけではないが、しかし、このような消費スタイルがいつまで続けられるだろうか。自販機販売へのブレーキは、賢明な消費者が地球環境や自分の身の回りを考えて資源の浪費を最小限に食い止めようとする表れかもしれない。新しい生活スタイルを求めて日本の消費者のすばらしい選択が始まったと見るべきではないか。
(山梨総合研究所 副理事長 早川 源)