VOL.6「石油生産のピークアウトは2035年?」
国際エネルギー機関がこのほど発表した「WEO2010(世界エネルギー展望2010)」で、ピークオイルに真正面から言及している。ピークオイルは、日本のマスコミでは取り上げられることも少ないが、「いつ世界の石油生産が限界に達し、資源枯渇期(または採算制約による生産縮減)に入るか」という現代文明のリスク問題である。
議論の前提となる世界の石油需要予測では、今後中国やインドに代表される新興国の経済成長が世界需要を押し上げ、2035年には2009年より日量1,500万バレル多い9,900万バレルに達する。一方、世界の石油生産量は2020年に6,800~6,900万バレルに達し、その水準で安定する。理由は先進諸国の代替エネルギーの開発、特に天然ガス液(NGL)の大幅増による。では、いつ石油生産がピークアウトするのか。
WEO2010は「2035年までにピークを迎えることはない」としながらも、「需要減退により2020年直前に8,600万バレルでピークに達する」というシナリオにも言及している。われわれの文明が石油枯渇を乗り切り、同時にCO2など温室効果ガスを削減するためには、社会のエネルギー消費の仕組みを根本から改革する必要がある。残された時間はわずか25年ということになるが、関心のある方は原文を参照されたい。
※世界エネルギー展望2010・日本語版サマリー http://www.worldenergyoutlook.org/docs/weo2010/weo2010_es_japanese.pdf
(主任研究員 井尻 俊之)