高対策のために円
毎日新聞No.347 【平成23年9月30日発行】
26日の東京外国為替市場では、欧州の財政・金融危機からの先行き不安への懸念からユーロが売られ、円相場は一時、最高値である1ユーロ=101円95銭まで上昇した。また、対ドルに対しても76円半ばで推移している。
このような歴史的な円高水準に対して、製造業を中心に生産拠点を日本国内から海外に移転する動きが加速している。
タイ日本貿易振興機構によると、2011年上半期(1月~6月)における外国資本によるタイへの直接投資(許可ベース)は、東日本大震災以降、日本からのものが大幅に増加し、件数・金額ともシェアが50%を超えた。この動きは6月以降も継続していて、2010年までは年間投資件数が250~350件ほどであったものが、現在では月に100件ペースとなっていて、そのうち半分ほどがタイに初めて進出する企業からとなっている。
県内企業には、タイをはじめとする海外に生産拠点を移転するような動きは目立って見られないが、今後とも現在のような円高水準が継続すれば、企業存続のために生産拠点を海外に移転せざるをえない場合も出てくるであろう。
言うまでもなく、本県経済を支えているのは製造業である。これら製造業が生産拠点を海外に移転してしまうと、県内経済に大きな影響を及ぼすことは間違いない。また、県内中小企業の中には、海外に生産拠点を移転したくても移転することができず、今後の先行きが不透明の中で生産を継続している企業が大多数であろう。
為替相場に関しては、本県及び企業ができる対応は限られている。生産拠点を海外に移転することなく、本県製造業が県内に生産拠点を維持するためには、それぞれの企業が培ってきた技術を活かし、円高に負けない競争力をいかに発揮するか知恵を出し合う必要がある。当然、競争関係にある企業同士が協力しあうことは難しい問題であろう。しかし、それぞれの企業の持つ強みや技術を活かしきれていない場合があるかもしれない。本県は人口90万人にも満たない小さな県であり、機動力が強みの一つである。知恵と技術を集積すれば、競争力のある商品開発ができるかもしれない。本県の持つ強みを最大限に活かし、今後を見据えた早急の対応が必要である。
(山梨総合研究所 主任研究員 古屋 亮)