地域資源「入門」
毎日新聞No.369 【平成24年8月31日発行】
子供たちの夏休みが終わった。7月・8月のカレンダーを見返すと、この夏に親子で参加したイベントの数々を思い出す。遺跡の発掘、ダム見学、どろんこ相撲にかかし作り、土器と石包丁作り、芸術鑑賞に発電所見学。これらはすべて自治体関係の企画によるイベントである。
いずれも単なる事業や事例の紹介にとどまらず、参加者が楽しみながら取り組める体験型プログラムが組み立てられており、企画運営に携わっている関係者の工夫と努力には頭が下がる思いである。
参加してまず感じたことは普段気に留めなかったところに、こんなものがあったんだ!という新鮮な驚きである。例えば、桃畑を拓いて道を通すのに先立っての遺跡の調査についていえば、普段何気なく通っている桃畑だったところを、地面のわずかな色の違いに気をつけながら掘ることで、建物の遺構や土器といった古代の人々の生活の跡が見えてくることに対する驚きである。
こうした体験を通して、歴史書にはないその土地の由縁の延長線上に現在の地域の姿がある、という一連の流れが浮かび、そして、普段あたりまえに目にする風景の中に土地にまつわる「ストーリー」が重なるようになる。
名物・名所名蹟の類のみならず、その土地をその土地たらしめるものすべてを「地域資源」と捉えてみると、“あたりまえのもの”が“そこにしかないもの”に見えてくる。自分が住んでいるまちのことについては日常生活の中に埋れてしまい、そこに新たな発見があるのでは?という意識すらないのがおそらく実情であろう。逆に普段気付いてない分、意外とこうした“埋もれた地域資源”はあるのかもしれない。
そうすると、その土地にまつわるストーリー付きの地域資源を「テーマ」とするのであれば、文字通り地域はテーマの宝庫、すなわち「テーマパーク」だ、といっては言いすぎだろうか。
ちなみに冒頭に挙げたイベントのいくつかには“シリーズもの”もあり、秋の収穫期に向けたプログラムも用意されているという。まだ見ぬ「テーマ」との出会いとたわわな実りを想うと、早くも秋の深まりが待ち遠しくなってきた。
(山梨総合研究所 研究員 佐藤 史章)
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