リニア新幹線中間駅の可能性
毎日新聞No.405【平成26年2月21日発行】
2027年のリニア新幹線開通まで14年を切った。まったく新しい輸送手段がもう目の前に迫っている。こうした中、中間駅周辺の各自治体・団体等は既に整備計画の策定に着手し、それぞれ計画の一端が報道されている。気になるのは、その多くが駐車場やバス・ タクシーなどと継ぎ目なく乗り換えることができる機能、あるいは歴史公園や観光案内施設、情報発信機能などの整備と判を押したように同じものであることだ。
リニア新幹線は世紀の大事業であり、それに相応しい新機軸が中間駅周辺開発には求められている。この際、参考になるのは鉄道史であり、その発展史を遡れば様々な風景が見えてくる。例えば、クリスティアン・ウォルマー著「世界鉄道史」の冒頭には「鉄道の発明は、現代と言う時代の幕開けを告げるものであった。そして鉄道がいかに人々の生き方を根底から変化させ、ありとあらゆる変化の触媒になっていったか」と書かれている。リニア新幹線の開通は、この言葉が象徴するように大きな影響を私たちに及ぼすことになる。
そしてこの鉄道史が教えるところは、リニア新幹線と中間駅機能を本源的に議論し、定義づけすることにより様々な発想と開発案が出てくるということであろう。例えば初期の鉄道の成長は、大規模な構想や統一的な計画に基づいて起こったわけではない。成長を促したのは鉄道に繋がりたい、単純に隣町まで短時間で行けるようにしたい、農産物や鉱物を取引したいという地元住民の願望であった。そして輸送手段・移動手段としての地位を確立し、経済発展と社会の発展を促してきたのである。
さて我々はリニア新幹線と中間駅にどの様な機能を期待するのか、あるいは付加すべきか。例えば高速鉄道か、都市型電車か、ネット接続できるビジネス型機能電車か、ななつ星列車のように大人の空間をコンセプトとしたものかなどその定義が重要になってくる。その先に新産業都市、職住近接型都市、環境・健康配慮型都市、多文化交流国際都市など中間駅を核とした「まちづくり」の姿が見えてくるのではないだろうか。
鉄道の輸送・移動手段としての機能に加え、サービス提供機能などを創造したうえで、30年、50年後の地域の姿を共有しながら行政と住民の議論が深まることを期待したい。
(山梨総合研究所 専務理事 福田 加男)