降雪から育むオフィス街の連帯
毎日新聞No.455 【平成28年2月5日発行】
暖冬といわれていた日本列島だったが、先ごろ甲府でも雪が降った。積雪量としてはたいしたことがなかったが、交通機関は乱れ、市民生活にも支障が出た。
こうしたなかで、私の勤務先の周辺では昨年までと違う景色が見られた。私の勤務する山梨総合研究所は平和通りに面したビルの中にあり、昨年までは目の前の歩道をアーケードが覆っていた。しかし、平和通りのリニューアル計画の一環で撤去されたため、今回の降雪では歩道が一面雪に覆われてしまった。
商店街であれば、店員さんたちが早朝から総出で雪かきをやるのであろうが、平和通りの東側は居酒屋など開店時間の遅い店が大半を占めるようになり、通りを挟んだ西側とは対照的に通勤時間帯を過ぎても雪かきはできていなかった。店舗の階上に住んでいたり、物販店であったりすれば、こうした事態にはなっていなかっただろう。山梨の玄関口であるのに、歩行者が安全に通行できない状況であった。
人が頻繁に通るにもかかわらず除雪が行われず歩行が危険という場所は、空き店舗の増加や高齢化による担い手不足もあり、増えているだろう。地域の店主たちの自発的行動、責任感に任せるだけでは、現実問題として解決が難しい。
行政による除雪が後回しにならざるを得ない歩道であっても、せめて主要な通勤路は、優先的に除雪できるように仕組みを整えたい。たとえば、平和通りのような飲食店街では近隣のオフィスと協定を結び、除雪してくれた人に利用割引券を配る、などの取組みはどうだろう。近隣のオフィスも始業時間を遅らせて従業員が地域活動を行えば、みんなに感謝される。付き合いのない隣のビルの従業員と作業を行えば、会話が生まれる。地元の飲食店を利用するきっかけにもなる。県庁や大手企業の従業員が、こぞって除雪作業をしてくれるなんていうこともありうる。
住宅地ではとっくに見られる光景だろうが、商業地やオフィス街でもこうした地域の連帯感が少しでも強まれば、除雪作業も「地域の縁を結ぶイベント」と捉えられるかもしれない。
(山梨総合研究所 専務理事 村田 俊也)