ワイン産地だからこそ


毎日新聞No.468 【平成28年8月5日発行】

 7月23、24の2日間、県内で「日本ワインコンクール2016」審査会が開催され、全国22道府県の96ワイナリーから出品された694種類のワインに対し、国内外の専門家25人で構成する審査員が厳正な審査を行った。
 毎年県内で開催され、今年で第14回を数えるこのコンクールは、国産ブドウのみを原料とし、国内で醸造された「日本ワイン」を審査対象とする国内唯一のコンクールだ。その目的は「日本ワインの品質・認知度向上」及び「産地イメージと日本ワインの個性や地位の向上」と明記されている。

 最近よく目にする「日本ワイン」という言葉を国税庁が定義したのは2015年10月のことである。その背景に消費者の関心の高まりがあったことは、多くの酒類が消費量を減少させている中、ワイン(同庁統計では「果実酒」)の消費量は増加し続けていることからもうかがえる。
 ワイン生産現場も活況を帯びている。ワイナリーの新規設立が進んでいることは、同庁統計による酒類製造免許場の数の推移で裏付けられる。2009年度と2014年度を比較して増加しているのは「みりん」と「果実酒」だけである。
 このように多くの消費者の関心を集めている「日本ワイン」。その代表的な産地が山梨県であることに異論はなかろう。
 1877年に地元の青年2人がフランスへ技術研修に赴いて以来ワイン生産が継続されている「歴史性」、全国稼働中の約200ワイナリー(日本ワインコンクール実行委員会事務局調べ)のうち約80が所在する「集積性」、国が保護に値すると認める「地理的表示」告示を唯一受けている「地域性」のほか、ワインに特化した大学研究機関や公設研究機関の存在など、「日本代表」の根拠には困らない。
 ただ、より多くの消費者に「日本代表」と認めてもらうために足りないものがあるとすれば、それは地元消費ではなかろうか。日本を代表するワイン産地でありながら、その消費量がビールの半分程度しかないことは同庁統計上、明らかである。もちろん、商品の流通量や価格の問題もある。しかし、生産地の地元住民が価値を認めて愛用するからこそ、その価値に外部の消費者が惹き付けられる。

 8月2日に公表された日本ワインコンクール2016審査結果において、県産ワイン15種類が金賞を獲得した。今夜はグラスを傾けながら、これらを育んだワイン産地について、思いを馳せてみることとしたい。

(山梨総合研究所 主任研究員 森屋 直樹)