五輪 選手が主役


毎日新聞No.469 【平成28年8月19日発行】

 メダルラッシュに国内が沸いている。遠く南米の地で胸に日の丸をつけた選手たちが連日熱い戦いを繰り広げている。普段あまり目にすることのない競技も、この選手たちの真剣な姿を目にすると、つい見入り、声援を送る。そして、選手たちのコメントを聞くと、改めてスポーツの素晴らしさとオリンピックという舞台の大きさを感じる。
 JOC(日本オリンピック委員会)の公式発表によると、今回のオリンピックには選手、コーチ、スタッフ、本部役員など総勢601人が派遣されている。今や国を挙げての大イベントとなったオリンピックだが、近代オリンピックとして1896(明治28)年に開催された第1回アテネ大会は参加国が14カ国、出場選手は241人であった。我が国の初参加はというと、明治から大正に改元された1912年の第5回ストックホルム大会である。国民の多くはオリンピックという言葉さえ知らなかった時代に、募金による資金をもとに役員2人、選手2人の総勢4人が派遣された。

 1回大会から120年の時を経て、今回のリオデジャネイロには205の国と地域・団体、11,000人の選手が参加している。戦争・紛争による中止・ボイコットといった国際政治の影響を受けながらも拡大を続けてきたオリンピックは近年、商業化への傾倒とともに開催国にとっては国際社会に対して自国をアピールする場となっている。その結果、巨額の開催費用が必要となり、開催国は収支バランスの均衡に悩まされている。
 オリンピックの変遷を思うと、考えてしまう。これからどこに向かうのか、と。地球規模における最大のイベント。ここまで成長した底流にはオリンピックの理念が人々に支持され、脈々と受け継がれてきたことがあるからに他ならない。その理念を失わず、選手が最も輝ける舞台であり、世界中の人々が自国の選手の躍動に見入り、声援を送る。そんな場であって欲しいと願う。

 日程も残り少なくなったが、もうしばらく日の丸をつけた選手たちに声援を送りたい。

(山梨総合研究所 主任研究員 末木 淳)