コインの裏と表
毎日新聞No.539 【令和元年5月24日発行】
『地域シンクタンク』
私の名刺の所属欄にはそのような修飾語が記載されている。試しに、息子が愛用している小学館国語辞典を引いてみると、『地域:ある範囲内の土地』との説明である。仕事柄、よく聞き、よく使う言葉だが、単純なエリア・区域を指すというよりは、そこに生活する方々をイメージしながら使うことが多いように感じる不思議な言葉だ。
私事だが、この春から仕事以外に2つの『地域』活動に関わる機会を得た。一つが自治会育成会長。そして、もう一つがママさんバレー。10年近く同じ場所に住み、『地域』の中で生活してきたつもりだが、2つの『地域』活動に参加したことで、思いもかけず、新鮮な世界を体験しているところである。
まず、先日、育成会長として自治会定期総会に出席した。自宅周囲よりもう少し広いエリアに住む年配の方々にお会いし、どの本にも書かれていない『地域』のささやかな歴史などを聞いた。振り返れば、子供の成長と共に『地域(自治会)』とのつながりが増えてきたように感じる。
また、同じ日にママさんバレーの試合があった。こちらでは女性のパワフルさに圧倒され続けた。単純に、山梨にはパワフルな女性が、こんなにたくさんいるのか!と。試合だけでなく、早朝の会場設営から夕方の試合後の片付けまで、女性ならではの細やかな気遣い・行動力を各自が当然のことのように発揮し、あっという間に全てが整ってしまう世界であった。
この2つの体験を通じて感じているのは、見えていない、見ようとしていないだけで、実は身近なところに様々な『地域』活動があるということ、そして遠くから見ているのと中に入って活動してみるのとでは、感じ方が全然違うということ。
そうはいっても、新しいことに踏み出していくには勇気がいる。実のところ、私も新しいことを始めるとそれだけ負担が増すのではないかと不安に感じ、役割を全うする自信が持てず、踏み切れない時期が続いた。それでも、性格的なものなのか、ウジウジしている自分に気持ちが悪くなり、勢いよく新しい世界に飛び込んでしまった。幸いにも、今のところ飛び込んだ世界を“楽しく”感じることができている。もしかしたら、地域活動に関しても“負担”と“楽しさ”はコインの裏と表なのかもしれない。皆さんも是非、お試しあれ!
(山梨総合研究所 研究員 山本 直子 )