生涯学習意欲の高まり
毎日新聞No.590【令和3年5月16日発行】
コロナ禍にあって、あらためて存在感を増している大学の一つに放送大がある。山梨学習センターが山梨大甲府キャンパス構内にあることからも、公立大の印象が強いが、意外にも私立大である。
長女が山梨大学大学院で修士の学位を受けたことに刺激を受けた私は、54歳で放送大学大学院を受験。入学者選考で小論文と英語長文読解に取り組み、千葉の大学本部での面接試問を経て昨年4月に入学し、2年に在学している。
一流の教授陣による多彩な科目が用意され、テレビやラジオ、インターネットを通じて、いつでもどこでも学べるのが放送大の魅力である。
山梨総研の仕事にも生かせるよう、「コミュニティヘルスケア研究」「教育行政と学校経営」「公共政策」「地域産業の発展と主体形成」「生涯学習の新たな動向と課題」など興味ある分野を履修した。特に「コミュニティヘルスケア研究」科目では、健康長寿県として、長野県の事例が詳しく紹介されており、同じく健康長寿県の山梨との共通点と、山梨が後れを取っている点が比較・考察できた。
ゼミでは宮本武蔵「五輪書」研究の第一人者である魚住孝至教授から指導を受けている。論文添削指導のほか、定期的にビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を活用したゼミも行われ、全国の学友から貴重な助言もいただけている。
今年2月、山梨学習センターから卒業研究・修士論文発表会の案内をいただき、出掛けてみた。2人の発表者の独創的な研究にうなり、さらに、それを真剣な表情で聴く数十人の参加者の熱気に圧倒される思いがした。大半が60代以上という印象で、長年の放送大在籍者も多いという。太極拳や英会話など五つのサークル活動も活発で、センターを拠点に、生涯学習を通じたコミュニティーがつくられている。
センターによると、昨年度は大学院生26人を含む581人が在籍。高齢化による学生の再入学の減少などで学生が減る傾向にあったが、コロナ禍で、「同じリモート授業主体なら、より充実した講義がある放送大で学びたい」という若者から注目されるなど、在籍者が増加に転じているという。生涯学習への意欲は、コロナ禍で、むしろ高まっているのかもしれない。
(山梨総合研究所 主任研究員 鷹野裕之)