逆境こそ変革を
毎日新聞No.591【令和3年5月30日発行】
5月20日、事業再構築補助金の二次公募が始まった。
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために、中小企業等の事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的としている。そのため、同補助金は新型コロナウイルスの影響で厳しい状況にある中小企業等の新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編といった思い切った事業再構築への挑戦を支援するものとなっている。令和3年度中に二次公募も含めて4回程度の公募が予定されており、予算額は総額1兆円超と大規模な事業となる。
新型コロナウイルス感染症は山梨県の経済に深刻な影響を及ぼしており、山梨県内でも多くの企業が同補助金の活用を検討することが可能であると思われる。
一方で、企業が事業を再構築するのは容易なことではない。新しい挑戦にはリスクが伴うほか、ヒト・モノ・カネ・情報といった限られた経営資源を再配分しなければならない。事業再構築への挑戦には、自社の強みの源泉である「コアコンピタンス」を明確にして、新たな領域で強みをいかに発揮できるか模索していく必要がある。
事業環境が複雑化する中では、自社のみならず外部の経営資源を活用することも重要である。同補助金では、要件の1つとして事業計画を金融機関や商工会議所等の認定経営革新等支援機関と共に策定することとなっている。また、公募要領の審査項目には、異なる強みを持つ複数の企業や大学等が共同体を構成することによる経済的波及効果を評価する項目がある。つまり、企業が地域の金融機関や大学等と連携することが飛躍の鍵として期待されているのである。
コロナ禍という逆境の中で重要なことは、山梨県内の産・官・学が総力を挙げて、地元企業の新たな挑戦を支援していくことではないだろうか。そのような中で、更なる飛躍を遂げる企業や、山梨県経済を牽引する新たな共同体が現れることを期待したい。
(山梨総合研究所 主任研究員 櫻林 晃)