働き手のスキルアップ
山梨日日新聞No.18【令和5年2月4日発行】
先月、山梨県知事選挙が行われ、長崎幸太郎氏が再選を果たした。想定外の批判票はあったが、これまでの政策や取り組みが県民に評価された結果となった。
長崎知事は、昨年5月「豊かさ共創会議」を立ち上げた。これは、人材不足と言われている地方において、働き手が自らスキルアップし、それによって企業の生産性があがり、更には賃金も向上するという好循環をもたらすための仕組みづくりを議論する場である。
昨年は合計3回の会議が開催され、第1回目の会議では、多摩大学大学院の田坂広志名誉教授が「山梨キャリアアップ・ユニバーシティ構想の推進を」という演題で講演した。県内の人材がこれからの時代が求める能力を修得し 高付加価値の労働力を身につけるためにどのような仕組みを創るべきかという提言である。
具体的には、能力開発の場を「一元化」し、キャリアアップ指導を提供するといった内容が含まれている。「一元化」とは 「三つのワン・サービス」を実行することであり、①一つの窓口に来るだけで、すべての手続きができ、②一つのサイトに来るだけで、様々な教育・研修サービスが一覧比較でき、③人材が、一対一で能力開発のアドバイスが受けられるといった内容である。
山梨県は、広報誌「ふれあい」に、「豊かさ共創社会の実現~スキルアップにより企業と働き手が共に豊かさを実現できる社会へ~」という記事を掲載している。社員のスキルアップが、企業の価値を高めるスキームを示している。
これに関係するものとして、現在「キャリアアップYAMANASHI」が進行中である。これは、山梨総合研究所が山梨県から委託された事業で、地域で働く全ての社会人を対象に、地域の豊かさにつながる新たな価値創造のために、時代の変化に対応した「新たな知識やスキル」を身に付けることを目的とした多様な学びや関係づくりの場である。
今回は、①観光おもてなし講座 ~宿泊者の体験を最大化する“時”のつくりかた~、②経営マネジメント講座 ~これからの時代を生き抜くしなやかな組織のつくりかた~、③AIリテラシー講座 ~AIを活用した業務改善のしかた~の3講座を開講している。
このような取り組みが、今後、県内における人材育成のためのリスキリングの場になることは大いに期待できるが、それ以外にも、U・I・Jターンといった県外からの人材の流入の受け皿的存在になってほしいと考えている。
(山梨総合研究所 理事長 今井 久)