CUU 現状と課題


山梨日日新聞No.40【令和6年2月19日発行】

 山梨県の新たな取り組みである「やまなしキャリアアップ・ユニバーシティ(CUU)」がいよいよ動き出した。CUUとは、地域で働く社会人を対象に、時代の変化に対応した「新たな知識やスキル」を身に付けることを目的とした学びの場である。
 現在、「経営マネジメント講座」、「DX実践講座」及び「ホスピタリティ・共感力講座」の3つが開講されているが、来年度からは10以上の講座が開講予定である。
 受講対象者は、「豊かさ共創スリーアップ推進宣言」をした県内の企業の経営者及び社員である。スリーアップとは、①働き手のスキル、②企業収益、③賃金のアップであり、働き手のスキルアップを起点とし、企業における収益性・生産性のアップ、さらには働き手の評価や賃金のアップにつなげ、それを動機付けとした更なる働き手のスキルアップにつながる好循環を目指している。
 CUUは、山梨県が主催する「豊かさ共創フォーラム」において運営方針を決定する建付けになっている。さらに、このフォーラムの下には、基盤構築検証ワーキンググループ(WG)、講座認定WG、広報戦略WGが設置され、CUUを実施する上での具体的な方向性が議論されている。

 先日、第2回目の「豊かさ共創フォーラム」が開催され、今後の運営方針等が議論された。先ず確認されたことは、働き手のスキルアップ(リスキリング)はその企業の経営戦略として行うべきという点であった。リスキリングというと、学びなおし(リカレント)と同意であると捉えられているケースが多いが、ここでは、企業の経営者が戦略的に行うものであり、経営者が自社の社員に新たなスキル身に付けさせ、企業の発展に繋げていくものと位置づける必要がある。
 現在開講されている「経営マネジメント講座」は、経営者を対象として、経営戦略の全体像や戦略策定のプロセスを先進事例を交えながら学び、最終的には自社の経営戦略デザインシートを作成することを目標としている。グループワークによって、他の受講者と話し合いながらシートを作成していくので、他社の情報を参考にすることもでき有意義であるが、受講後、この学びを企業内でどれだけ実践に結びつけられるか、そしていかに社員のリスキリングに繋げていくかが今後の課題である。また、このような講座をより多くの経営者に受講してもらうかも重要である。
 そして、議論が集中したのが、スリーアップ宣言をする企業が増えCUUが成功するためには、結果を出すことが重要であるということであった。経営者が戦略的にリスキリングを推進する場合、短期的な目標のために行う場合と、中長期的な目標のために行う場合がある。短期的な例としては、現時点における人手不足の解消や、デジタル化の推進による業務の効率化などのために必要とされる人材の育成が挙げられる。一方、中長期的な例としては、新しい価値を生み出すことができる人材の育成が考えられる。
 前者の場合、短期的に売上高や利益などの結果につながる可能性は高いが、後者の場合は、結果が出るのに時間がかかってしまう。そのため、リスキリングの結果として何を目標とし、どのように評価していくかは今後の課題である。

 このようにまだまだ課題はあるが、CUUは県内の中小企業の発展にとって重要な取り組みであることは間違いない。

(公益財団法 人山梨総合研究所 理事長 今井 久)