ラジオのある生活


毎日新聞No.667【令和6年7月7日発行】

 平日の朝、AMラジオを聴いている。社会人になってしばらくテレビを持たない生活を送り、現在は、テレビはあるものの毎日の生活の中で見る習慣はない。きっかけは忘れてしまったが、結婚後、朝ラジオをつけ始め、その後、子どもが生まれても、朝ラジオ生活を継続している。しかし、ラジオを日常的に聴いている人は少ないのではないだろうか。
 NHK2つあるAM放送を2026年度から統合することが2023年に発表され、ラジオも時代と共に縮小傾向かと思っていたが、令和5年版情報通信白書の民間放送事業者数の推移をみると、2010年から2022年の間にAM13から16FM298から390(コミュニティFM含む)と増加している。まだまだラジオを聴いている人は多くいるのかもしれない。

 ラジオのメリットとして、「~ながら聴く」というのが容易であること、リスナーも参加できること、非常時に役立つことなどが挙げられる。
 まず、見るということが必要ないので、手を止めずに楽しめる。そのため、農作業を含め様々な作業中や運転中でも問題ない。
 また、放送の合間にリスナーとのやり取りがあるなど、テレビに比べて視聴者との距離が近い。NHKの朝のニュースの合間にすら、リスナーからのコメントが紹介される。そこには、SNSとは違った良さがあると思う。
 そして、小型のため置き場所を取らず、携帯しやすいうえ、停電時でも使える。また、真偽のわからない情報が飛び交い取捨選択が必要となるSNSとは異なり、情報の出所が確かな放送での情報は信用できる。
 一方、ラジオのデメリットとして、途中から聴き始めると内容が理解しづらくすぐに全体像をつかめないこと、知りたい情報が瞬時に得られないことなどが挙げられる。インターネットなど他の手段で知りたい情報を入手可能な場合は、不便に感じるだろう。
 それでも、テレビやインターネットにはない様々なメリットを考えると、たまにラジオを生活の中に取り入れて、聴くのに慣れておくのもいいのではないだろうか。

 子どもが4歳になる前あたりから、ラジオから知っている言葉が流れると「大雨って言ってたね」などと教えてくれるようになった。何が何だかわからない言葉の羅列だったラジオの音声が、意味を成していると気づき始めたのだろうか。ラジオでの、いわば日本語リスニング学習も意外と効果があるようだ。

(公益財団法人 山梨総合研究所 研究員 清水 季実子