女性の社会進出と管理職の未来


毎日新聞No.668【令和6年7月21日発行】

 1985年の男女雇用機会均等法成立から約40年が経過した。働く女性の数は大幅に増加し、2022年の就業構造基本調査によると、女性の有業率は全国で53.2%、山梨県で54.2%、長野県で54.9%となっている。結婚・出産期に一旦低下し、育児が落ち着いた時期に再び上昇する「M字カーブ」もほぼ消滅し、女性の社会進出は大きく進んだように見える。

 しかし、女性の有業率を正規と非正規で見ると、正規職員の割合は全国で46.8%、山梨県で43.8%、長野県で45.7%と、両県とも全国平均を下回っている。全国的にも非正規職員のほうが多い状況が続いており、女性が仕事よりも家事・育児を優先している傾向が見受けられる。博報堂生活総研の「生活定点」調査(2022年)でも「女性は子どもができても仕事を続けたほうがよい」の回答は43.6%にとどまっており、女性の家事・育児優先の意識が垣間見える。
 さらに、学研教育総合研究所が202310月に行った小中学生対象の「将来のなりたい職業」調査では、小学生男子の1位が「YouTuberなどのネット配信者」であるのに対し、女子は「パティシエ(ケーキ屋)」と、一見家事に近いともみえる職業が7年連続で1位に選ばれており、無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)が刷り込まれている可能性も拭い切れない。ちなみに、英国の調査(2017年)では男子の1位はスポーツ選手、女子は教師で、アメリカでは性別での調査自体が行われていない。
 国は第5次男女共同参画基本計画で「2020年代の早期に指導的地位に占める女性の割合を30%程度にする」という目標を掲げているが、そもそも非正規職員のほうが多かったり、アンコンシャス・バイアスの懸念がある中では進展が限定的なのもうなずける。

 一方で、前述の「生活定点」調査(2022年)では、「女性の上司のもとで働くことに抵抗はない」とした回答は8割に達しており、女性上司や女性管理職を受け入れるマインドは醸成されつつある。ただし、男女別の内訳では男性72.9%、女性88.5%と差があり、特に50代、60代男性は65%程度と低く、女性上司を受け入れられない意識が残っている。
 これらの統計や調査結果を踏まえると、女性の社会進出や管理職登用を促進するためには、女性自身や、身近な関係者、そして子どもたちがアンコンシャス・バイアスになっていないかを「意識」することが重要である。また、企業内では中高年男性が女性管理職を受け入れ、女性管理職が当たり前となる風土を作りも必要だ。

 山梨県は7月から女性管理職候補研修を開始する。この研修により最終的には「女性管理職」といった「女性」が付いた呼称がなくなることを期待したい。

(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 渡辺たま緒